事業フェーズごとの最適な採用戦略とは
セミナーレポート
2021年5月27日 開催

状況に左右されない事業フェーズごとの最適な採用戦略とは

労働人口の減少にコロナ禍と、市場動向や候補者を取り巻く環境が大きく変化している今、採用においても時代や事業フェーズに合わせた戦略が求められています。

そこで今回、弊社の人事部中途採用グループの素花(そばな) 玲香とEight事業部の橋本 剛による「候補者や市場が変化しても採用できる事業フェーズごとの最適な採用戦略」についてのオンラインセミナーを開催しました。

現在の中途採用市場の概況や弊社の事業フェーズごとの採用戦略、新たに取り入れている採用手法をご紹介します。

登壇者

橋本 剛(はしもと・ごう)

Sansan株式会社 Eight事業部
EightCareer部マネージャー

新卒でTポイントやTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社。営業やデータベースマーケティング事業などに約10年間従事。2019年にSansanに入社し「Eight」を活用した採用サービス(Eight Career Design)に立ち上げから携わってきた。現在は、マーケティングの責任者として、セミナーの企画運営・広告等も取り扱っている。

素花 玲香(そばな・れいか)

Sansan株式会社 人事部 中途採用グループ

広告営業を経て、Sansanが300名ほどの規模だった2016年に入社。入社時から中途採用を担当しオペレーション構築に携わり、エンジニアやクリエイティブ採用に関わることが多い。現在は、ダイレクトリクルーティング担当として、スカウトやリファラル採用での母集団形成に従事。

中途採用市場の概況について

はじめに、中途採用市場の概況について、橋本から解説させていただきました。

橋本:現在、日本の労働人口はどんどん減っていて、2030年には労働需要に対して約644万人不足すると言われています。

さらに転職市場は、2019年の就業者約6,700万人に対して年間5%程しか転職をする人がいない状態です。

このまま労働人口が減っていけば、転職市場の人口もどんどん減っていく…レッドオーシャン化が進んでいるのです。

労働人口/中途採用市場概況

橋本:労働市場が転換期を迎えている今、新たな採用モデルを模索することが必要不可欠と思っています。その背景には以下の理由があります。

・労働人口が減り、転職市場の競争環境が激化している
・DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進み、AI技術などの高度な専門性を保有する人材が求められている
・従来の「メンバーシップ型雇用※1」から「ジョブ型雇用※2」に移行していく必要がある。
※1 メンバーシップ型雇用:採用してから仕事を割り振る雇用形式
※2 ジョブ型雇用:仕事を基準に採用をする雇用形式

労働市場の転換期

橋本:コロナ禍においては、企業が採用を行う上で候補者に求めるものが変わってきています。

また、候補者側にアンケートを行ったところ、4割の方が「企業選びの軸が変わった」働き方の多様化(テレワーク・副業など)を重視している」と回答していました。

つまり、労働市場が転換期を迎え、企業が求める人材像も、候補者の企業選択の軸も変わってきています。

こうした状況下では、採用戦略も新たなものを取り入れていくことが必要なのです。

中途採用において重要なポイント

Sansan社の『事業フェーズごとの採用戦略』

次に、弊社が具体的にどのような取り組みを行ってきたか、事業フェーズごとの採用戦略について素花から紹介させていただきました。

素花:弊社の従業員数は2021年2月に800名を超えてきているところです。直近の3年間で約400名以上に入社いただきました。

従業員数

素花:そんな弊社の事業フェーズにおける採用戦略について、以下の4つに分けてご説明していきます。

1:創業期
2:成長期
3:拡大期
4:第二創業期

1:創業期

素花:創業期とは、「Sansanがどんな会社か」ということが世間に認知されていなかったフェーズです。組織の規模も人数も少なく、特定のエージェントに協力していただいて採用活動を行っていましたが、候補者を集めるのが大変でした。そのため、必然的に社員に候補者を紹介してもらうリファラル採用がメインになっていました。

当時は、「一緒に会社を創っていける仲間を、みんなで採用していこう」という雰囲気がありました。この時期の採用体制は、採用選任の者がいたわけではなく、人事の中の数名が全般担当する形でやっていました。

事業フェーズと採用戦略

2:成長期

素花:「早く言ってよ〜」というCMを始めたのが、成長期です。事業としてもCMに予算を使って『とにかく名前を売っていく』フェーズでした。

世間的にも、「Sansanがやっていることはよく分からないけれど、CMを見たことがある成長中の企業」という認識になってきた頃です。

採用手法として、エージェントやスカウトなど、幅広く取り組み始めた時期でもあります。

さまざまな企画が立ち上がる中で、自分が一番イケてると思う人に声を掛けて社長と直接面談をする『TheBest』というリファラル採用の社内プロジェクトも生まれました。実際、『TheBest』を通して入社し、今も現役で活躍しているメンバーもいます。

採用の組織体制としては、中途採用専任で採用に向き合うメンバーが3名ほどいるような形で取り組んでいました。

事業フェーズと採用戦略

3:拡大期

素花:私が入社した2016年は、拡大期に当たります。中途採用に向き合っているのは私を含めて4名ほどで、この時期の課題が「採用が属人化している」ことでした。

強いリクルーターのおかげで良い人材に出会えていた時期でしたが、「さらに採用に全力で取り組むには、組織体制を整える必要がある」という課題を持って取り組んでいた時期でもあります。

2018年頃には、アシスタントや業務委託の方にも中途採用のメンバーに加わってもらうなど、体制をより強化し、10名ほどが携わる状態まで成長しました。

人数が増えたことで、技術職とビジネス職の採用担当を分けたり、母集団形成を専任で行う採用企画と、採用決定に向き合うリクルーターの役割を棲み分けたことが、戦略的に採用していけるようになった理由だと思っています。

事業フェーズと採用戦略

4:第二創業期

素花:現在もこの第二創業期におりますが、事業成長のギアを一段上げるために、拡大期よりもさらに採用を加速させています。弊社代表の寺田が『革新期』とも呼んでいるフェーズです。

エンジニアの採用にも力は入れていますが、CM等で認知を獲得し、問い合わせが増えている中で、特に営業組織を拡大し、事業を多角的に展開して成長をドライブさせるという目標に向かって進んでいます。

例えば、「ゴジラプロジェクト」という、半年で営業を55名以上採用していく企画も2019年頃から走り始めました。

事業フェーズと採用戦略

素花:弊社は、この1〜4のフェーズを経て900名以上の体制になりました。

さらにたくさんの方に参画いただけるよう、さまざまな取り組みを行っており、まさに今が新たな採用フェーズに入るタイミングです。

集客を重視した新たな採用フェーズ

素花:弊社では、2020年からスタートした「BillOne※3」に続く新しいサービスの展開や、既存のサービスの機能をさらに広げることを予定しています。
※3 さまざまな請求書をオンラインで受け取れることができるクラウド請求書受領サービス

そのため、採用のスピードを落とさず加速させていくのが今の目標です。

ただ、これまでエージェント、スカウト、リファラルと一通りの戦略を行ってきている中、これからさらに採用を加速させていくためにはどうすればいいのか、悩んでいるところでもあります。

そんな状況の中でもう一段、採用スピードを上げていくために、新しい取り組みができないか、と普段から考えているところです。

そして、そのための肝は、母集団形成つまり集客にあると思っています。

そもそも必要な採用人数に対して、応募数が増えなければ面接数も増えないですし、採用決定の可能性もどんどん減っていきます。同じような課題感を持っている採用担当者の方も多いと思いますが、『集客』は難しいんですよね。

そこで今回は、弊社が新しい採用フェーズの中で行っている、『集客』を重視した取り組みを2つ共有します。

・現場と協業する採用
・MAツールを活用した採用

現場と協業する採用

素花:弊社のセールスディベロップメント部という、インサイドセールスのメンバーが所属している部門との協業事例についてお話します。

この協業、実は現場から相談をもらったことから始まったものです。

結論からお話すると、難しい母集団形成(集客)を、現場のみんながやってくれているという仕組みを作ることができました。もう頭が上がらないですね。

・当初の課題

インサイドセールスは、アポ取り部隊や営業になるための教育機関のようなイメージが強く、候補者が集まりにくいという課題を抱えていました。

一方Sansanのインサイドセールスは、営業とマーケティングを繋ぐハブとしての機能を持っていることが特徴です。

言語化能力、想像力や実行力など、ビジネスにおいても重要なスキルを求められる、やりがいのあるポジションです。

そういった魅力をもっと発信して「採用力を上げていくために自分たちにできることはないか」という相談でした。

・改善のための取り組みと結果

実際に行っているフローがこちらです。

(1)現場がインサイドセールスの魅力を発信
(2)発信する中で「面白そう」「選考を受けてみたいな」という候補者を人事へ連携
(3)人事から候補者へ連絡し選考を開始

普段インサイドセールスと向き合ってるメンバーが自主的に動き、人事の私たちと会話を重ねることで、このフローが出来上がっていきました。

フローを構築する上で、人事からは、以下の情報を共有しました。
・面接で確認するポイント
・採用のターゲット像

他にも採用の施策を進めていく上では、「採用イベントの運営方法など最初の骨子を作る」などのサポートにも入っていました。

今は、
・記事のコンテンツを考えて作成する
・採用イベントの企画・集客・運営
・スカウト
まで、全て現場主体で実施をしてくれています。

この取り組みを通して、「インサイドセールスに応募したい」という候補者が、平均して月40名前後いらっしゃり、直近の1年間で4名ほど採用出来ている状況です。

今は、この進め方が確立したフローとして採用の取り組みの1つになっています。

新たな取り組み

MAツールを活用した今後の採用について

素花:続いては、これから取り組もうとしているMAツールを活用した採用についてお話します。

弊社では、以前から定期的に採用イベントや勉強会を開催しているので、エントリーしてくれた参加者の情報を多数保有している、いわばプールしている状態にあります。でも、それを有効活用できてないという課題を持っていました。

この課題感を持ったきっかけは、候補者の方から「以前、イベントに参加しました」と言われるケースが度々あったことです。

その時、「この方はたまたま応募をしてくださったけど、せっかく興味を持ってくれたのに候補者として引き上げられていない方もいらっしゃるのではないか」と気がついたんです。

試しに、過去にイベントや勉強会などに参加してくれた方400名分ぐらいの情報をまとめてアプローチをしてみました。

すると、50〜60名ほどの方から「興味あります」「選考エントリーします」という声をいただき、結果1名採用となったんです。

タイミングや時期なども関わってくるため、一概には言えませんが、400名中50〜60名がエントリーしてくださったので、その際の応募率は約14%でした。一方、エージェントのデータベースからアプローチをしていき、エントリーをもらえる確率は3%ほど。スカウトだと5〜6%ほどだと以前聞いたことがあります。

とすると、応募率14%はとてもいい確率です。

「きちんと仕組みとして成り立つ形にして応募を獲得できたら、新たな採用手法にできるのではないか?」と思い立った瞬間でした。そのためのMAツールを導入してチャレンジしてみようと、検討しているところです。

まとめ

採用は、候補者や市場の変化に応じて戦略を練る必要があることはもちろん、事業フェーズによっても最適な方法は異なります。

転職市場がレッドオーシャン化している今、ポイントとなるのは母集団形成です。

弊社が新たに取り組みはじめている現場との協業や、MAツールを活用した候補者となる前段階の方の情報収集からのアプローチなど、これまでの採用戦略では目を向けていなかった部分に、この時代を切り抜けるチャンスがあるかもしれません。

めまぐるしく社会の状況が変化する今、その時々に適した採用戦略がとれるよう、常に一歩先を見据えながら動いていくことが大切です。

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