ニトリが実践するタレントマネジメント
セミナーレポート
2021年4月23日 開催

人事・採用からキャリアの自律を促進する ニトリが実践するタレントマネジメント

終身雇用が当たり前だった時代はもう終わりを迎えています。働き方の多様化も加速し、企業と個人の関係は、より対等になっていくでしょう。こうした中、「キャリアの自律」は企業と個人に共通する大切なポイントです。

今回のセミナーでは、人事HRアワード2020を受賞された株式会社ニトリホールディングスの組織開発室室長・永島寛之氏をお迎えし、働く一人ひとりが自律してキャリアを築くことの重要性と、企業の人事・採用という側面から「キャリアの自律」を促す方法についてお話しいただきました。その内容をダイジェストでご紹介します。

登壇者

永島 寛之(ながしま・ひろゆき)

株式会社ニトリホールディングス
組織開発室 室長(人事責任者)

東レ株式会社では国内・米国の法人営業、ソニー株式会社ではマーケティングに従事。ソニーUSA出向中、グローバル展開を予定していたニトリの話を耳にして憧れを抱き、2013年ニトリに入社した。店舗を経験後、新卒採用部マネジャーを経て、2017年から現任の人材教育部マネージャー、2019年からは組織開発室室長も兼任し人事・採用に関わる。

小川 泰正(おがわ・やすまさ)

Sansan株式会社 執行役員 Eight Career部 部長

2002年エン・ジャパン株式会社入社。リーマンショック後、事業再編に関わり子会社の事業立ち上げにも取締役として参加した。2015年Sansan株式会社に入社後は執行役員として、「Sansan」のカスタマーサクセスやマーケティング等を牽引。2020年よりEight事業部にて現職に就任。ダイレクト採用プラットフォームの「Eight Career Design」事業の推進に従事している。

人事・採用からキャリアの自律を促進するとは?

小川:『人生100年』と言われる中で、個人は結婚や出産、介護とさまざまなライフイベントを迎え、『キャリア』もライフステージによって変わっていくでしょう。

その変化に対して企業が「どんなサポート体制を組めるか」というのが今回のテーマです。

実際に、1社あたりの平均勤続年数は日本国内で10.9年。50年間働くと考えると、国内だけでも4回、5回の転職が当たり前になってきています。

また企業に属しながらも「いかに個人としてスキルアップするか」という考え方がないと、市場価値は高まりません。これからはスキルや経験がタグのように個人に付き、継続的に職務経歴書をアップデートし、発信していく時代だと思っています。

そうなると、企業は組織のニーズだけではなく個人のニーズやタグも加味した上で、タレントマネジメントをしていくことが重要になるでしょう。

人事・採用の観点から見た自律促進2つのポイント

小川:ポイントは2つあると思います。

・タレントプール
・タレントマネジメント

採用視点・育成視点

小川:タレントプールとは、転職検討層や現職活躍層という転職意志が顕在化していない方々を囲い込む(=タレント/人材をプールする)ということです。

一方タレントマネジメントとは、「タレント=従業員のスキルや経験」を最大限活かせるような配置・教育を行う人事手法を指します。

タレントプールとは

小川:Eight Career Designが支援できるのはタレントプールの方です。企業がタレントをプールするにあたっては以下がポイントになります。

<企業がタレントプールする際のポイント>
・アプローチ方法
・アプローチした相手とどう接点を持ち続けていくか

この2つのポイントをおさえ、現職で活躍する優秀層をプールし、企業がダイレクトにスカウトできるのが「Eight Career Designの特徴です。

また、Eightもビジネスパーソン一人ひとりのキャリアの自律を促す役割を担うことができます。

例えば、弊社の名刺管理アプリEight上でキャリアのサマリーを入力すればできるようになると、名刺を起点にした職歴書が出来上がっていきます。

Eight内で職務経歴書をupdate
※上記画像は将来の『Eight Career Design』のアップデートのイメージ

小川:今後はワンクリックで職務経歴書に近いものをアップデートできる機能を追加していきたいと思っています。

職務経歴書をアップデートできていれば、個人は自然と自分のキャリアと向き合うようになります。企業がこうした個人をプールしてアプローチを続けることで、キャリアの自律をより促すことができます。また自社においては活躍が期待できる人材と接点を持ち続けることにもつながります。

人事の役割とニトリのタレントマネジメントとは?

続いて株式会社ニトリホールディングス永島氏から、タレントマネジメントが社員のキャリアの自律にどうつながるのか、また施策における人事の役割についてご説明いただきました。

人事の役割に対するニトリの基本的考え方

永島氏:ニトリでは個人の力で世界を変えるステージを整えることを人事の業務の起点にしています。

その上で、ニトリでの人事の仕事のポイントは以下2つです。

1.個人のEmployee Journey(エンプロイジャーニー)をデザインする
2.未来組織を考えて個人の価値観とミッション・ビジョンをつなげていく

どちらも、テクノロジーを取り入れることで実現できています。

人事の仕事 employee journeyデザイン

1.個人のEmployee Journey(エンプロイジャーニー)をデザインする

永島氏:エンプロイジャーニーとは、企業に入社してから個人が経験する教育や昇進・昇格、配置転換、またプライベートでの変化など、さまざまな体験を図解化したものです。

この『個人のエンプロイジャーニーを作っていくこと』が人事の仕事であると、常に意識する必要があります。

デジタルマーケが顧客接点を変えた

永島氏:デジタルの力により、マーケティング業界ではお客様それぞれに合わせた提案やナーチャリング手法が可能になりました。しかしこれらは人事の世界ではあまり活用されていません。ここを変えていく必要があると考えています。

2.未来組織を考えて個人の価値観とミッション・ビジョンをつなげていく

永島氏:『未来組織』とは、組織として今後どうなっていきたいかを具体化したものです。非連続な成長曲線を描くなら現在の組織課題だけではなく、『未来組織課題』を経営課題と結びつけて、それこを従業員に伝えていく必要があります。

さらに、それをミッション・ビジョンという形で言語化することが大切です。「ゴールがどこなのか」をしっかり設定し、言語化することは私もすごく意識しています。

そうして個人の価値観や好奇心を組織のミッション・ビジョンに有機的につなげるのが人事の役割です。そこに企業文化が生まれ、ビジネスモデルになって利益につながっていく。そのような流れを作るためにも、人事の役割は非常に大きいと感じています。

ニトリ式タレントマネジメントについて

永島氏:ニトリでは2〜3年に1度、部署が変わるニトリ独自の教育方法「配転教育」を取り入れています。これはタレントマネジメントの軸となっており、本人がどこに向かっていきたいかを考えて、希望ベースで配置替えをしています。

異なる部署で違う方向からビジネスを見る機会をたくさん作ることで、自律分散型の組織に成長できていると考えているからです。

自律分散的な組織で人材も自律

フラットな組織評価に役立つITテクノロジー

永島氏:弊社はピラミッド型ではなく壁がないフラットな組織を作っていこうとしているので、マネジメントは難しいです。

特に評価が難しいので、そこが人事の腕の見せ所だと思っています。

とはいえ、人の目だけでは、数年ごとに配置転換しながらフラットな組織を作り上げていくことはできません。そこで務評価や自己学習をしたラーニング歴などのデータを「Workday」というマネジメントクラウドに入れて分析。その結果から配転も行っています。

永島氏:ここで重要なのは、いかに定性情報をデータ化して集めてくるかということです。

定性情報のデータがキーになる

永島氏:集めたデータをもとに人事の評価や配転に結びつけていくために、3つの軸を大切にしています。

1.本人が何を達成したいのか

永島氏:ニトリでは30年キャリアデザインシートという、これからの30年間で何をやりたいのかをまとめるシートを作成し、年2回確認しています。

また、多様な学習ができる環境も用意していて『誰がいつ、何時間どんな勉強をしたのか』というデータも取り、「何に興味を持っているのか」や「学習姿勢」を把握しています。

2.コンテスト

永島氏:弊社では商品起案などの人材発掘型コンテストを多数開催しており、熱意や達成志向性も図ってデータ化しています。

ただ、「熱量をどうデータ化するか」については今も大きな課題となっていますね。

3.パルスサーベイの結果

パルスサーベイとは、短期間に従業員の満足度などを図る調査です。毎月行い、モチベーションなどを図っています。評価は高いのにモチベーションが低い方を見つけたら、特定の研修や面談をしてフォローできるようにしています。

ただ、それでも人材育成は難しいです。そのため、人事だけでなく上司も部下の現在・未来・過去の状態を把握できるシートを共有しています。

シートは部下の以下要素を見て1on1(面談)で、今すべき仕事を考えられるようなツールとして、マネージャー(上司)が活用しています。

・30年後何したい人なのか
・来年何したい人なのか
・過去の配転履歴

従業員と組織が一体となってゴールを目指せているかを表す「エンゲージメント」という言葉がありますが、これは個人を見ながら組織の未来の姿を見せれば自然と出てくるものではないかなと私は思っています。

たとえ今は納得していなくても、未来の姿に納得していればエンゲージメントは強くなると考えて、『未来組織』を大切にしています。個々に対応できるようになった今こそ、テクノロジーを活かすタイミングでしょう。

企業文化醸成のためのニトリの工夫

永島氏:ニトリでは元々、未来の形を明確にしてそれを言葉で伝えようという文化がありました。人事としての役割は、経営からきちんと吸い取って言語化して、社内や求職者向けに打ち出していく作業、つまり広報として動くことが非常に重要だと思っています。

一方の個人の価値観や好奇心は、さまざまなものに包まれていて見えづらい。だから、研修やアンケートなどを通して「いかに発信してもらえるか」を大切にしています。

例えば「ニトリ図鑑」という本を作って、会社にどんな業務があるのかを紹介し、どんなキャリアの道があるのかを分かってもらえるようにしました。情報を発信すると、価値観や好奇心も出てきやすくなるので、そこをつないでいく。有機的につなぐというよりは、配置転換していって近づけてあげるようなイメージです。

・誰が何をやりたいか(個人)
・やるべきこと(組織)

を明確にすることがポイントです。

小川:「会社として従業員に対する発信をすること」と「従業員が考えていることを聞き出すこと」を常にやっていらっしゃるところが素晴らしいですね。

永島氏:これは人事だけでなく、個人の力で成長してきた会社だということを、経営者側が体感として持っているかどうかだと思っています。

今後は現職活躍層にも期待

小川:Eightでは企業側が募集要項を作り、対象者をキーワードのような形で検索をかけて、スカウトやアプローチをしていくことを進めています。そのうえで、ユーザー個人も

・スカウトに対してどのくらい興味を持っているか
・転職意向がどのくらいあるか

などを明示できるキャリアサマリーへとアップデートしていきたいと考えています。

Eight Career Designの画面イメージ

小川:さまざまな会社で働いたという経験そのものがアップデートされていき、その延長線上にまた新たな出会いが生まれるようなものになっていければ、と思ってます。

永島氏:そうですね、これだと思います!

・何ができる人なのか
・どういうスキルがある人なのか

という経験やスキルが積み重なっていって、仕事とマッチすれば採用していけばいいんですよね。

個人のスキルを明確にして言語化することが大切だと思うし、社内外関係なく積み上げていくものだと思っています。

まとめ

未来組織のミッションやビジョンを言語化してわかりやすく発信し、個人の好奇心を吸い上げていくことがタレントマネジメントのポイントということがよく分かるセミナーだったのではないでしょうか。

弊社でもEightを活用して「人事・採用からキャリアの自律を促進し、現職活躍層を動かせる仕組み作り」に今後も取り組んでいきたいと思います。

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