セミナーレポート
2024年4月18日 開催

HR Leaders CAMP 2024┃新時代に必要な人材マネジメント┃人事と経営で実現する強い組織作りとは

HR部門改革による企業の成長を本気で施策するビジネスパーソンのための学びと交流の場として、2024年4月18日に開催されたイベント「HR Leaders CAMP 2024」。当日は、これからの時代に必要な人的資源の活用や、マネジメントについて、さまざまな方々からの講演をいただきました。

基調対談では、株式会社ポーラの代表取締役社長、及川美紀氏と、株式会社プロノバ代表取締役社長、岡島悦子氏にご登壇いただきました。新時代に必要な人材マネジメント人事と経営で実現する強い組織作りについてお話いただいたセミナーの内容をご紹介します。

登壇者

及川 美紀(おいかわ・みき)

株式会社ポーラ 代表取締役社長

宮城県石巻市出身。東京女子大学卒。1991年同社入社。
子育てをしながら30代で埼玉エリアマネージャーに。2009年商品企画部長。12年に執行役員、14年に取締役就任。商品企画、マーケティング、営業などバリューチェーンをすべて経験し、20年1月より現職。(トータルビューティー事業本部長兼務 )誰もが自分の可能性を拓くことができる社会をミッションに、パーパス経営・ダイバーシティ経営を牽引している。

岡島 悦子(おかじま・えつこ)

株式会社プロノバ 代表取締役社長/株式会社ユーグレナ 取締役 兼 指名報酬委員会委員長

ヒューマンキャピタリスト、経営チーム強化コンサルタント、リーダー育成のプロ。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。丸井グループ、セプテーニ・ホールディングス、ランサーズにて社外取締役。20年12月より、ユーグレナの社外取締役を経て、取締役CHRO(非常勤)に就任。世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出。著書に『40歳が社長になる日』(幻冬舎)他。

強い組織を作るためには人的資本経営への転換が必要

一人一人の生産性を爆発させることが重要

岡島氏:強い組織を作るために必要なのは、人的資本経営への転換です。私たち企業人が直面している大きな2つの課題を乗り越えるには、人的資本経営への転換は避けて通れないものとなっています。

<企業が直面している課題>
1 労働人口不足
2 市場の縮小

人が足りない、市場も縮小しているという状況の中では、人事は一丁目一番地、最優先課題です。これまでは、人件費などのコストだったり、「何人足りない」というキャパシティの問題だったりと、人材を人的資源として捉えてきた企業が多いのではないでしょうか。

しかし今は、一人一人の生産性を爆発させることが、非常に重要となる時代です。そのため、人材を投資対象である人的資本として捉えて、取り組んでいくことが必要とされています。

©ProNovaInc, All Rights reserved.(当資料の無断転記、複製、配布は固くお断りいたします)

組織能力に必要なのは能力を爆発させること × 環境整備

岡島氏:組織能力を上げるためには、個々人の能力を爆発させるための環境整備も必要です。環境は、仕組みと組織文化に分けられます。私が関わっている丸井グループや社外取締役をしている企業では、ほぼすべてこうした形で分解をして、組織文化の浸透や、仕組みを作っていくことをかなり戦略的にやっています。

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及川氏:環境の中では、組織文化はやはり大きいですね。

岡島氏:ポーラさんも創業95年、丸井ももうそろそろ100年ということで、100周年を目掛けて取り組んでいるところですが、歴史がある分、動きが重くなる面があります。方向を変えようとしてもなかなか動かなくて、真面目にやっているにも関わらず、変えにくいのが現実です。

そうした環境の中でも、組織文化に働きかけたり、仕組みを作ったりと、各社さまざまな取り組みをされているところかと思います。

未来を見据えて大きな変化を促すことが必要

組織の復元力に対抗するビジョンを打ち出す

及川氏:ポーラでは、「尖れ、つながれ」という組織風土改革のスローガンがあります。当社は、真面目な社員が多く、出る杭になるような尖っている社員が少なかったんです。でも今の時代、いろいろな人のさまざまな意見を闘わせていかないといけないと思うんです。

岡島氏:私がお手伝いしている企業でも、尖った方たちが入社しているはずなのに、最適化して丸くなってしまうのを目の当たりにしています。

及川氏:そこは、組織の復元能力だと思っています。特に、ポーラのように歴史ある企業では、ちょっと動いたな、と油断すると復元力がすごいので、元に戻ってしまう。「尖りすぎたかな」と思って引っ込んでしまうので、社員の行動を内向きな組織人から外向きなバリュークリエイターに変えたいっていうのが、最初のビジョンでした。

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未来人材から管理職の要件定義を考えたら若返っていった

及川氏:「こんな人を育てたい」と話しているうちに、「管理職も変わらないとならない」という課題に行き着き、管理職の要件定義も見直してみました。慣例的に、キャリアから考えて「そろそろ管理職だよね」として昇格してしまうと変わっていきません。

岡島氏:今まで口伝伝承や、慣習的に作ってきた任用基準や、要件定義をバッサリ変えることは必要ですよね。

及川氏:ポーラも管理職の要件定義を見直し、業務的な部分だけでなく未来志向・変革意欲など多面的にポテンシャルを見てもらえるように変更し、外部機関の評価も取り入れました。そうすると「荒削りでも、会社として育てていこう」という、若い方も管理職に増え、組織が変わっていきました。

お堅い組織文化も事例と環境整備で変革できる

つながりを増やして事例を作ることで組織が動く

及川氏:外向きのバリュークリエイターを作るために、1〜3年以内にポーラにどんな変革、変化を実現するのかと問いかけて目標を設定してもらいました。3年間の中長期計画目標のマイルストーンを25%のところで設定して、中間発表の場を「尖れ、つながれカンファレンス」という形で設けています。

他にもビジネスアイディアコンテストや、SDGs大会など、様々な形の取り組みを発表する場を設けています。違う部門の人だけでなく社外の方との接点もできるため、つながる原資になって社員自体もチャレンジできることが増える取り組みになっています。

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岡島氏:素晴らしいですよね。ただ、この取り組みだけ取り入れようとしてもうまくいかないですよね。まずは要件定義があって、それにつながる取り組みを施策として打つことで、生産性を上げていくことにもつながります。

ポーラさんのように、横のつながりを創出する事例が出てくると、なかなか組織文化が変わりにくい会社でも効果的な兆しとして社内に見えやすくなっていくのだと感じました。

手挙げ文化を支えているのは、失敗を許容し挑戦できる環境

岡島氏:丸井グループは、ビジネスモデルを変革してきています。実は丸井は、小売ではなく、売上の9割以上をフィンテックが占めるようになってきているのですが、注目していただきたいのは、資産の変化です。

建物や土地といった物から、どんどん無形資産、人的資本、知財、ソフトウェアに移ってきています。そのため、変化に合わせた組織作り・文化作りをやっていかなければならないのです。

岡島氏:企業文化もとても古い面があって、2008年頃の中期経営計画の推進会議では、売上の高い店舗の参加者から順に前から座っているような状態でした。現在は、ようやく手を挙げる文化に変わってきたのですが、そうすると中期経営推進会議でも、圧倒的に若手の参加者が増え、若手の勢いが強くなってきています。

岡島氏:ただ、まだ受け身文化が根深く残っているので、いい提案を持ってるのに手を挙げない優等生がたくさんいるんですね。そこで、打席数、つまり挑戦した数をKPIにする形に変えて、とにかく打席に立ってもらうようにしました。

失敗を許容して、挑戦できる環境を作る。社会実験企業と自社を呼んでいるのですが、この人的資本の取り組みは、すべて開示しておりまして、株主様からも非常に評判が良いものとなっています。

社員の主体性を対話と傾聴で育てていくことが重要

広い視野を持った社員を増やしていくことがエンゲージメント向上につながる

岡島氏:丸井グループでは、10年ほどエンゲージメントのデータを取っておりますが、丸井グループの社員4,500名のフロー状態を見ると、2022年の時点で52%が「自分の強みを活かしてチャレンジしている」という状況となっています。

これを2030年までに60%にしようと考えています。そうすれば、1人当たりの生産性をぐっと上げていくことができるので、強い組織になっていけると思っています。

及川氏:エンゲージメント施策では、やはり社員の主体性を上げるところがテーマです。言うことを聞く社員よりも、提案してくれる社員の方が、経営者に近い目線で俯瞰したものが見えています。そういう社員を育てるためには、聞くことが大切です。

ただし、小さな問いを問いかけていると社員は小さくなります。「今月の売り上げ達成のために何したらいい」「どうやって半期の予算を達成するか」という手段を聞いてしまうのは小さな問いです。大きな問いと小さな問いを行ったり来たりしないと、社員の考える力は上がりません。

大きな問いと小さな問いを行きつ戻りつすると、社員もだんだん大きな問いで考えられるようになると感じています。「目の前に数字があったり、忙しいと小さな問いだけに終始することがある」ということを肝に銘じて、自分自身も大きな問いを発せられるような人たちになっていくことが重要です。

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対話力と傾聴力を上げて常に考え続けていくことが重要

岡島氏:現場には現場値があって、それをメタ認知していくためのやり取りを対話の中で進めていくことが大切だと思っています。対話の営みは、丸井グループなども非常に重要視していて、強い組織を作るためには、対話力と傾聴力を上げていく必要があるというのが一つ大きなポイントです。

及川氏:やっているつもりにならないことが大切です。現状を常に確認して、どこに変化の可能性、伸ばせる可能性、理想に向かっていける可能性があるのかを考えていくことがとても大事だと思っています。

岡島氏:経営者として覚悟を持って一人一人の人的資本を最大化していくことを、トライアンドエラーを恐れずにやってみる。そして、組織能力の方程式を常に考え続けることが重要だと思います。

まとめ

労働人口も、消費人口も減少していくことが見えている現代において、強い組織を作るためには、一人一人の持つ力を最大限に引き出し、人的資本を最大化していくことが大切です。

変革をもたらすことが難しい古い体制の組織でも、人事と経営陣がしっかりと手を組み、社員が育っていけるよう環境を整え、対話を重ねていくことを、覚悟を持って取り組むことで変化させることは可能です。

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