セミナーレポート
2024年4月18日 開催

HR Leaders CAMP2024|人的資本を活かした経営戦略の実践|活躍人材の創出における押えるべき要点

HR部門改革による企業の成長を本気で施策しているビジネスパーソンのための学びと交流の場として、2024年4月18日に開催されたイベント「HR Leaders CAMP 2024」。

その基調講演から、人的資本経営の課題やソリューションについて、一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄氏と、株式会社サイバーエージェント常務執行役員CHO 曽山 哲人氏によるご講演をご紹介します。

登壇者

伊藤 邦雄

一橋大学
CFO 教育研究センター長

一橋大学商学部卒業。一橋大学教授、同大学院商学研究科長・商学部長、一橋大学副学長を歴任。一橋大学名誉教授。現在、一橋大学 CFO 教育研究センター長。商学博士。2014 年に座長として「伊藤レポート」(経済産業省)をまとめ、国内外から大きな反響を呼んだ。その後、経済産業省「持続的成長のための長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」(「伊藤レポート 2.0」)座長、同「SX 研究会」(「伊藤レポート 3.0」)座長、同「企業価値の向上と人的資本の研究会」(「人材版伊藤レポート」)および(「人材版伊藤レポート 2.0」)座長、同「GX ファイナンス研究会」座長、内閣府「非財務情報可視化研究会」座長、「TCFD(気候変動財務情報開示タスクフォース)コンソーシアム」会長、「人的資本経営コンソーシアム」会長、経済産業省・東京証券取引所「SX銘柄」評価委員会委員長、同「DX 銘柄」選定委員長、内閣府内閣官房「三位一体労働市場改革分科会」委員などを務める。また日本を代表する会社の社外取締役を務める。

曽山 哲人

株式会社サイバーエージェント
常務執行役員 CHO

上智大学文学部英文学科卒。高校時代はダンス甲子園で全国3位。1998年に株式会社伊勢丹に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事。1999年に当時社員数20名程度だった株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。現在は常務執行役員CHOとして人事全般を統括。「若手育成の教科書」「クリエイティブ人事」「強みを活かす」などを出版。プロダンスDリーグの「サイバーエージェントレジット」のオーナーも務める。

いまなぜ、人的資本経営に取り組んでいるのか

人的資本経営の課題と解決方法

伊藤氏:人的資本経営を推進するためには、社会的な課題を認識し、対策を立てていく必要があります。

アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが指摘した、学習することで徐々にやる気が失せる「学習性無力感」を始め、「悪性安心感」「居心地の良さ」は、終身雇用や年功序列などのメンバーシップ型、また長期雇用により生まれた問題です。

さらに日本社会が人への投資に対して脆弱、または貧弱だったことから、特に若い世代では自己成長意欲の低い傾向が見られることや、日本人のエンゲージメントは、世界の中でも最低レベルと言われているなど、日本の企業ではこれまで技術的なキャリア形成を推進する一方、人生キャリア形成にはほとんど注力してこなかったことが大きな問題となっています。

これらの課題を解決するための重要なキーワードは「自由と規律」です。これまでの日本企業はどちらもそれほど厳しくはありませんでした。自由と規律を切り離して、個人の選択肢を重視する制度設計が、今後は必要だと考えます。

また、人的資本経営では非常に重要となるリスキリングや、心理的安全性が確保された状態の構築、同時にウェルビーイングを高めることが、人的資本経営の課題解決には必須です。

曽山氏:安心感のお話がありましたが、私は個人も企業も成長できる「成長実感が伴う安心感」がもっとも良性の安心感なのではないかと感じました。

サイバーエージェントの「人的資本経営」事例

曽山氏:私からは、サイバーエージェントの事例について、伊藤先生が提唱されているもので、経営陣が持つべき3つの視点と具体的なアクションをもとにお話したいと思います。

※出典:2022年「人材版伊藤レポート2.0」_経済産業省

【視点1】経営戦略と人材戦略の連動

1つ目の経営戦略人的戦略の連動という視点における、当社の重視点についてお話します。

まずは経営陣が人事を重視しているという点です。当社では人事が業績に紐づくとの考えから、事業開発と組織開発はセットであると発信しています。

次にCHOやCHROなどの役員が人事に所属していることで、経営的な文脈を議論できる体制であることです。

最後が経営目標達成のための人事課題を経営課題と定義することです。人事の課題は多岐にわたると思いますが、中でも業績目標を達成するためには絶対に解決しないといけないものを「経営人事課題」とし、3つの連携の中でそれを設定する必要があると捉えています。

【視点2】As is-To beギャップの定量把握

2つ目の「As is-To be」という、現在と未来を照らし合わせたギャップの定量把握の視点についてお話しします。当社では毎月社員に対して行っているアンケートから、ひとりひとりが生き生きと働いているかを把握しています。

具体的には「GEPPO」というアンケートシステムを採用しています。成果を天気マークで表しスコアリングしていくことで、個別のアプローチが可能になりました。

また「GEPPO」を活用し事業部ごとに評価の推移や比較を検証し、感覚的に課題を捉えることができるようになりました。

【視点3】企業文化への定着

企業文化への人的資本の取り組みを定着させるかという3つ目の視点において、当社では3つのポイントを実践しています。

・軸の明文化(ビジョンとミッションステートメント)

ひとつめは「軸の明文化」はビジョン・ミッションがきちんと浸透しているかです。当社ではビジョンとミッションステートメントとして以下の3点を体現するように努力しています。

・能力の高さより一緒に働きたい人を集める
・若手の台頭を喜ぶ組織で、年功序列は禁止
・挑戦した敗者にはセカンドチャンスを

・横のつながり(懇親会支援、部活、役員会食)

ふたつ目は社員同士の横の繋がりが強いかどうか。リモートも増えている中で、企業文化を醸成するためには、横の連携は非常に重要です。部活動や食事会などもひとつの繋がりだと言えます。

・個人への光(全社表彰:褒めは盛大に)

最後の「個人の光」は表彰です。基本的に人は褒められるとがんばろうと思えるので、きちんと褒める・認めるという部分を大事にした方が良いでしょう。弊社では半年に一度、活躍した人を全社表彰として盛大に褒める場を作っています。

ハイ・パフォーマーを生み出す「フロー」状態

伊藤氏:経営戦略と人事戦略の連動の重要性から人事戦略のスキルを持つ人材の確保が課題になります。

人事戦略のスキルレベルと仕事の難易度を考察する際、時間が経つことを忘れるほど仕事に没頭する状態の「フロー」という言葉がキーワードになると思っています。

フロー状態になるとハイ・パフォーマンス・生産性が高まり、ひいては業績も上がることにつながります。

下の表から解説すると、横軸では右側がもっともスキルが高い状態、縦軸はチャレンジレベルが高く、両方が高まることでフローになります。

さらに「覚醒」状態とは普段より、少し高いレベルの仕事をすることで、フローに移る状態を表し、ここで必要になる高いスキルレベルまで持ち上げることが難しいんですね。

そこでリスキリングが重要となります。

出典:1997年「Finding Flow: The Psychology of Engagement With Everyday Life 」_M.Csikszentmihalyi

曽山氏:当社においても活躍し続ける幹部には「ラーナビリティ」が極めて重要だと議論しています。常に学び続けることが自らのスキルレベルを向上させることにつながると考えます。

伊藤氏:やはり人的資本経営では、社員のウェルビーイングを高めることがとても大切だと感じます。そのためには経営層と社員だけではなく、社員同士でも対話しつつ、学び合う姿勢を醸成することが成功の鍵になるのではないでしょうか。

曽山氏:確かに当社では社員同士の学び合いや教え合い、ディカッションが非常に重要だと捉え、社内勉強会を支援する仕組みを作っており、それがひとつの文化になっています教え合ったことを還元する状態ができると、とても重層的な文化になるのではないかと思います。

伊藤氏:社員がどの程度フロー状態になり仕事に没頭しているかなどは確認されていますか。

曽山氏:GEPPOで「挑戦できているか」との項目があり、イエスの回答率をフロー状態、もしくはフローの一歩手前ではないかと判断しています。

伊藤氏:フロー状態で仕事に没頭することができると、非常に業務が楽しく充実感も高まります。個人のスキルをフロー状態、あるいはその手前まで持っていけるかが、今後の人的資本経営において非常に重要なテーマになると思います。

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