リファラル採用は、制度設計ではなく文化や組織作りが重要です。とはいえ、事前に何を準備すればいいのか、他の採用とは違う運用ポイントなどが数多くあるのも事実です。
今回は2020年12月に行われた、株式会社ROXXの山田 浩輝氏、株式会社リチカの山田 健太氏、そして弊社橋本の3名による、リファラル採用に関するパネルディスカッションの内容を前後編に分けてご紹介します。
後編となる今回は、事前準備や紹介できる人を増やす仕掛け、社内で文化を作る取り組みなど、実際にリファラル採用を運用する際のポイントについての内容を、ダイジェストで取り上げます。
登壇者
山田 浩輝(やまだ・ひろき)
株式会社ROXX/ COO
青山学院大学在学中にROXX(当時はRENO)を起業。agent bank/ back check両事業の事業責任者を経て、今は何でも屋さん。採用にもコミットしている。
山田 健太(やまだ・けんた)
株式会社リチカ VP of Corporate
大手食品メーカーにて人事経験後、株式会社リチカに参画。労務から財務まで広い知見を持ち、就任後はコーポレート業務全般を管掌。累計4億円以上(借入含む)の資金調達を牽引。
橋本剛(はしもと・ごう)
Sansan株式会社Eight事業部
Eight Career部マネージャー
新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社し、Tポイント提携営業やデータベースマーケティング事業に従事。2019年にSansanに入社。『Eight Career Design』立ち上げ期にセールス面を中心に携わる
リファラル採用を成功させる事前準備とは?
前編では制度設計よりも、リファラル採用に全社的に取り組む文化や習慣化が大切だという話がありました。とはいえ、事前に決めておいたほうがいいこともあるといいます。
山田(健):「どんな人を採用したいのか」「誰が紹介するか」など、具体的に何がしたいのかを決めることです。あとはその人がやりやすいように支援してあげるのが制度設計だと思います。
山田:制度設計というと、つい賃金給与規定などを思い浮かべがちですが、そうではないんです。まずは紹介のフローや選考中のプロセスなど、オペレーションを設計するほうが圧倒的に重要だと思います。特別な選考プロセスを用意するのかどうか、その間の候補者への情報提供を誰がどういうふうにやるのか、これはとても大事ですね。
優秀な人を紹介できる人を探すことも大切
「社員全員が優秀な人材を紹介できるわけではない」というROXXの山田氏からは、このような提言もありました。
山田:まずは組織図を開いて、リファラル採用で人材を紹介できる人がどこにいるのかというのを確認すると良いですね。その人たちを人事がインタビューして、具体的に誰を攻めるのかを探すべきだと思います。
優秀な人を紹介できる人の特徴
またリチカの山田氏からは「自分でコンテンツを出してる人は、紹介してくれる人が多い傾向にある」といいます。
山田(健):自分の持っているノウハウをオープンにして、そこに人が集まってくるという方の方が、自身に親しい人とのコミュニティを持っているので紹介してくれる人の数が多いかもしれません。
山田:リファラルを上手くできる人の特徴は「人間力>社内実績」ですね。社内実績は与えられてるミッションや仕事の難しさ、会社との相性などが関係すると思いますので、仮にその時点で会社内では高く評価されていなくても、人間力が高い人であれば優秀な人材を連れてこれるという人がいる可能性はあると思います。まずはその人の話を聞いてみたいと思えるか、言ってることが信頼できるか。そういう人間力が高い人は全体としてリファラルを上手くできる可能性が高いです
エンジニアが積極的に外に出る機会作づくりを
リファラル採用では、エンジニアのような専門職がターゲットになることも少なくありません。リチカの山田氏の話を受け、ROXXの山田氏からは「エンジニアは外部の勉強会やコミュニティに積極的に参加してもらった方が良いといったお話もありました。
山田:エンジニアは友達もエンジニアということが多いですし、新しい同職との出会いを求めている傾向があると思います。ですので、例えば就業時間中の勉強会の参加を認めたり、費用を支援したりということも推奨した方がいいと思いますね。
こうして「コミュニティや勉強会に行ってる人たちの方がかっこいい」という文化感にしていくと、自然と参加する人が増えて、それぞれがつながりを作り、自然に「うちの会社いいよ」と言ってくれるようになるというのを経験上感じていて。そこで人事部はハンドリングしようとするのではなく、きっかけ作りや動きやすい支援をしてあげることにフォーカスした方がいいと思いますね。
優秀な人材を確保するための各社の取り組み
またスムーズな運用のために、Sansanやリチカではこのような取り組みを行っているそうです。
橋本:社内のコミュニケーションツールや「SansanTV」というインナーブランディングツールの中で「このポジションが空いているので、いい人がいたら紹介してください」と随時発信しています。SansanTVでは人事担当が、最近リファラル採用で入った人を取材して入社経緯などを報告しています。
また紹介のための会食代も会社から出しています。コロナ禍はオンライン会食も支援していましたね。もちろん、結果的に紹介や採用につながらなくても問題ありません。「会社のことを社外の方に伝える場として使ってください」というくらいハードルを低くしています。
リチカの山田氏からはこのような実例をご紹介いただきました。
山田(健):候補者とはライトなお付き合いからスタートさせていくのが非常に大事だとお思います。私達も候補者にお会いしてからは、ふんわりと「何か一緒にできることはないですか」とお話していますね。
また社外の人を呼びやすいようにイベントスペースを作るようにしています。まずはラフな形で会社のことを知ってもらって、その上でお互いに相性の良さを感じたら、具体的な話をしていくようなイメージです。
ラフに関わることを重視しているリチカですが、一方で選考に移るかどうかのタイミングについてはしっかり相手に伝えるのだといいます。
山田(健):選考を受けるかどうかについては、わりとはっきり最初にお聞きしています。その上で、相手が望むのであれば「ここから先は選考させてもらいます」というように、その境目を意識して相手に確認するようにはしていますね。
採用中や見送る時に気をつけるポイント
一方でリファラル採用を行う際は、通常の採用とは違った、配慮すべきポイントがあるといいます。
橋本:弊社の場合、社員は自分の友人や知人を紹介しているのに、その結果が分からないということで、「会社から言われて紹介したのに何も連絡がない」と不信感が生まれた時期があったというふうには聞いています。これは採用を見送った場合も同様ですね。
ですので弊社では、紹介してくれた相手とも、できる限りの情報共有やコミュニケーションを密に行います。もし採用を見送った場合でも、可能な限り理由を伝えて納得してもらうことは、今でも注力しています。
リファラル採用を運用する際には、通常の採用とは異なるさまざまなポイントが存在します。リファラル採用の文化を醸成するとともに、これらを丁寧にクリアしていくことが、優秀な人材確保の第一歩になるようです。今回の内容が、貴社の効果的なリファラル採用につながることを願っております。