ダイレクトリクルーティングにおいて、どのようなスカウト文面を書くかは重要なポイントです。今回は月額制の採用代行「まるごと人事」を提供する株式会社ビーグローバルの今 啓亮氏を講師に迎え、スカウトメールの基本事項や作成方法、また職種別のポイントについてお話していただきました。その一部をご紹介します。
登壇者
今 啓亮(こん・けいすけ)
株式会社ビーグローバル 代表取締役
「月額制の採用代行」の”まるごと人事”を運営中。新卒で入社したベンチャーでは3年勤務し、30名から100名に急成長するフェーズを経験。2013年に突然カンボジアで人材紹介会社を起業。2015年に東京で株式会社ビーグローバルを設立。
ダイレクトリクルーティングの前提
スカウトメール作成のポイントに入る前に、まずはダイレクトリクルーティングの特性や性質について確認しておきましょう。今氏からは3つの前提が提示されました。
今氏:ダイレクトリクルーティングは「攻めの採用」で、他の採用と比べると、ある程度のアクションが必要になります。
また「人材発見」と「惹きつけ」という2ステップで行われるのも特徴です。
企業としてどんな人材を求めているのかを自分たちで考えて、『この人だ!』という人を見つけに行く作業が人材発見です。
一方惹きつけは、見つけた方に興味を持ってもらうというところですね。「読み手がどう思うか」「自社のこと全く知らない、または興味のない人が読んだときにどう感じるか」というスタンスで書いてもらうと、イメージが付きやすいと思います。
スカウトはラブレターというよりもテレビ通販に近いですね。
テレビ通販って、例えば「今日の晩御飯に悩む主婦のあなた―!このフライパンがあればメニューに悩みませんよ」という感じで、突然紹介されると思うんです。それでほしくなっちゃって、実際に電話するという流れですよね。
スカウトも同じで、「あることについて今後迷ってませんか」とか「うちだったらこういう働き方ができるんですよ」という形で提案します。だからテレビ通販に近いと思います。
スカウト文面作成のポイント
採用候補者を惹きつける上で必要になるスカウト文面について、4つのポイントが紹介されました。
今氏:まずひとつ目の「要点を書く」については、流し読みされる前提で作るということです。
全部入れこもうとすると長くなってしまいますよね。そうなると候補者さんも読まなくなります。要点は、以下2つで構成しましょう。
・自社の強み
・相手のメリット
訴求内容が役職によって変わることも、スカウト文面では重要です。マネージャーや事業責任者は事業内容やマネージメントの対象が判断軸になりやすい。だから、最高候補者の役職が上がるにつれて、自社の強みを伝えることが重要になります。会社のホームページや募集要項などもセットで考えましょう。
魅力を言語化する際のポイント
企業や事業の魅力を言語化するためには、重要な点を書き出して要素を見える化し、ターゲットやレイヤーごとに使い分けることも必要です。
言語化では、どこを強みとして訴求すべきかが重要になるといいます。ここでは5つのポイントの解説を抜粋してご紹介します。
・驚かれる数字
面接のときに「あっ、それはすごいですね」と言われるようなポイントを数字で表す。採用ホームページでよく見かける情報は、実はそれほど刺さらない。
例)創業○○年(浅い場合でも実績が多ければ強みになる)、時間数(60,000時間採用しているなど)、社員数(社員10人だがこんなに売上を上げている)など
・ビジネスの強み・ビジネスモデルの特徴
客観的にみたときの強みや特徴。自社では当たり前だと思われているものが、実は対外的に魅力になることも多い。
例)顧客数2万社など
・今後の目標・ビジョン・ミッション
まだ達成していないが、今後目指すもの。候補者にとっての共感ポイントや同じベクトルで走っていけるかの指標になる。
例)事業拡大目標、上場を目指す(その後のビジョンも加えて)、社会課題へのミッション
・給与・福利厚生・働き方
特徴や強みとして出せるもの。
例)リモートワーク(週○回可能など)、副業可、業務委託を持っている、フルフレックスなど
・いまのフェーズの面白さ
時間軸での自社の魅力。タイミングによって興味をもたれることも。
例)立ち上げ直後、第二創業期など
こんなに違う!スカウト文面修正の前と後
実際に携わった事例のスカウト文面の改善前後をご紹介いただきました。
※実際の事例を少し改変しています。
<改善前>
・前置きが長い
・メリットが混在
・ネクストアクションが曖昧
<改善後>
・事前説明は3行程度で強みだけを書く
・メリットは一つずつ。それぞれに根拠を書く
・ネクストアクションを明確にする
<効果>
返信率が5.8%から11.1%にアップ
職種別スカウト文の事例解説
ここからは職種別に、それぞれのスカウト文の骨子と実際の作成例をご紹介いただきました。
スカウト文を書き始める前にやるべきこと
1.骨子作成
今氏:書き始めると主観的になりますし、募集文を見ながらコピペして書くとそれがベースになってしまう。そこを「メリットはこれ」「メリットの根拠はこれ」と、骨子を考えてから書き始めるとストレートに伝わる文章になります。
2.ペルソナ作成
今氏:骨子と合わせて事前に作成するのが良いでしょう。
上記を踏まえた上で、「マーケティング」「営業職」「エンジニア」「事業責任者」それぞれの事例についてのポイントを確認します。
マーケティング
<骨子>
<骨子を基にしたスカウト文>
今氏:一番最初に「導入200万店舗のレジシステムの会社でマーケティングを担当してみませんか?」とストレートに書いたパターンです。
ポイントとなる自社の強みは「リリースから4年間で200万店舗がご利用いただくまでになりました」というところですね。明確に数字で提示しています。
営業職
<骨子>
<骨子を基にしたスカウト文>
今氏:最初に『前年比200%以上で成長中のITサービスの営業としてご案内してます』というのをストレートに明示し、すごく成長してる会社だということを数字で伝えています。
また物流・流通に関わる会社なので、ITに関する知識はいらないんですよ」では「専門知識がなくてもIT業界に入れるんですよ」ということを明示しました。
自社の強みの部分は「6億円の資金調達が完了しています」「前年比200%」「2倍以上」というところですね。
エンジニア
今氏:エンジニアに関しては、見られるポイントが他の職種とは異なります。
働き方や、使える開発言語が選べること、使うPCがMac、Windows含めて選べるとか、スペックも同様、というのがメリットになります。
<骨子>
<骨子を基にしたスカウト文>
今氏:ここでは最初に驚かれる数字を入れています。
提示メリットの根拠が『上場を目指しています』というところです。
また
エンジニアとしては実際に使われるプロダクトを作りたいっていう思いをお持ちなので、「お客様が20,000社」というところも明示された強みと言えますね
事業責任者
<骨子>
<骨子を基にしたスカウト文>
今氏:事業責任者に関しては、採用参考記事として自社のホームページを見る体で記載しています。
事業内容やシェアの話、どんな領域でやっているのかっていうのを最初の3行で伝えています。
その後、裁量権の話が下の次の3行であって、その根拠として「ミドル層マネージャーが不足していて、どんどん裁量権を任せていきたい」というフェーズなんですよと。だから今回オファーしますという根拠が書いてあります。
まとめ
スカウト文はターゲットの職種や状況、ステージによって訴えるべき内容が変わります。ターゲット設定や骨子の作成などを行った上で、候補者のメリットが明確に伝わる内容を書くことが必要になります。
ぜひ皆さんも今回の内容を参考に、自社のスカウト文を見直してみてはいかがでしょうか。