スタートアップ企業にとって、リファラル採用は創業時から推進すべき重要な採用チャネルの1つです。
そこでリファラル採用120名、全社比率60%を誇る株式会社SUPER STUDIOのCRO 真野勉 氏よりこれまでの採用の軌跡や実践されてきた施策についてご紹介いただきます。
登壇者紹介

真野 勉(まの・つとむ)
株式会社SUPER STUDIO 取締役CRO
2014年に株式会社SUPER STUDIOを代表の林氏、花岡氏と共同で創業。自社サービス「ecforce」を広告宣伝なしで100ショップ導入を実現する傍ら、採用人事として5年間で100名へと組織を拡大。現在は企業間アライアンスなどをリードしている。

山田 浩輝(やまだ・ひろき)
株式会社ROXX 取締役COO
大学在学中、代表中嶋とROXXを創業し、COOとして従事。2017年に新規事業責任者として、人材紹介ビジネスに特化したクラウド求人データベース『agent bank』を立ち上げる。2019年より、オンライン完結型リファレンスチェックサービス『back check』を統括。

佐々木 和哉(ささき・かずや)
Sansan株式会社 Eight事業部 Eight Career Designセールス
SNSなどのWEB広告を活用した採用ブランディングの営業やマネージャー職を経て、採用領域において幅広い分野を経験。2020年Sansan入社。現在はEightを活用したダイレクトリクルーティングサービス「Eight Career Design」のセールスを担当。
SUPER STUDIOが実践してきたリファラル採用とは
真野氏:創業メンバーの4名はそれぞれが取引先や同級生、関係性のもとで集まり、SUPER STUDIOを立ち上げました。現在約250名の従業員のうち109名、累計で120名の方にリファラルで入社していただいており、比率的には高い状況です。

真野氏:創業メンバーが少しずつ違う業界に身をおいていたため、それぞれが違う人脈を持っていたことが、現在の組織形成に大きな意味をもたらしていると考えられます。現在の執行役員やマネージャークラスを務めているメンバーの中にも、創業メンバーのリファラルで入社しているメンバーが多くいます。
真野氏:会社の知名度が低く、まだ強いプロダクトを持っていなかった時期は、リファラル以外にも弊社のカルチャーを理解していただいた方に仲間になっていただけるよう、いくつかの手法で採用を進めてきました。
<カルチャーで勝つ戦略>
・採用手法にこだわりはなし
・カルチャーの醸成:環境の良さ、採用面接時と入社時のギャップをなくす(良い点も悪い点も共有)

リファラル促進施策
真野氏:リファラル促進施策としては、「賞賛する雰囲気の醸成」と「良い会社をつくる」という大きな2軸をもとに進めてきました。

リファラルを賞賛する文化と自社のバリューに特化
真野氏:Slackに専用チャンネルを作り、友人や知人を紹介してくれた社員を褒める文化を醸成し、紹介しやすい環境づくりを促進しています。

真野氏:また特徴のひとつとして紹介に対するインセンティブを設けていないことが挙げられます。

成果を出した人が評価される“良い会社”を作る
真野氏:弊社の従業員規模が30~50名ほどの時期から、「成果を出した人がきちんと評価される」ということを徹底してきました。
評価を左右するポイントを不明確にしている企業もあると思いますが、そこは心を鬼にしてしっかりと評価して、不平等をなくす文化形成が重要です。
また広報が仕掛ける社内外へのメッセージにも工夫が必要です。特に発信する内容に実情とのギャップがないよう細心の注意を払いました。
<良い会社を作るための3つの要素>
・役割:現・新メンバー双方の合意、業務内容は現場が決めオンボーディングの全てを確定
・目標:個人OKR設定に時間を多く使う、目標設定では双方の納得感を重視
・評価:方向性を明確にし努力が報われる仕組み、成果がしっかりと評価される

リファラル採用のメリットと課題の整理
真野氏:リファラルで入社した方にとっては、入社前から知っている人にさまざまなフェーズで相談相手になってもらえるなど、信頼できる人との関係性がある中で仕事ができるため、非常に良い掛け算の方程式が成り立っているのではないかと思います。
経営から見るとオンボーディングがやりやすいという点は大きなメリットだと感じます。
<リファラル採用のメリット>
・入社後の相談相手がいる
・わからないことを聞ける相手がいる
・業務で関わりのない人と交流がしやすい
・紹介者もモチベーション向上
・スピーディなオンボーディングに貢献

真野氏:一方、採用要件が変わったり、エンジニアの複雑な要件を紹介者である社員が理解できないといった課題もありました。これらの課題を解決するためには候補者・社員の双方と真摯に向き合い、会社の一員として当事者意識を持って採用活動に携わってもらえるよう、ポジションや部署による情報格差をなくすことがポイントです。
また最初にお話する際には、リファラルだから必ず入社できるわけではないことを明確にお伝えしています。
<課題と改善策>
・採用要件の変更を知らなかった ➡ 全社月例で採用要件を伝える
・採用進捗が分からない ➡ 選考進捗情報をリアルタイムで共有
・選考時にかかるリファラルのバイアスや、選考優先権があると候補者が誤解する ➡ 紹介社員に候補者としっかりコミュニケーションをとってもらう

リファラル採用を推進する施策
真野氏:ボードメンバーへの質問会や食事会は日常的に実施しています。、また、過去にはレセプション・パーティを開催し、候補者の方には現場社員だけではなくボードメンバーとも実際に会って話をしてもらい、会社の雰囲気や考え方をお伝えする場を設けたこともあります。

創業当初から着手すべき施策とは?
佐々木:初期からやっておいて良かった施策を教えてください。
真野氏:起業当初こそ時間があるので、さまざまな施策を試すことができる期間だと思います。私は会社のイメージがまだまだ浸透していない時期に、個人的な趣味を軸にコミュニティを作りいろいろな方と会い、そこで弊社の価値観などをお話ししていました。そのコミュニティを起点に、弊社に誘った方も実際にいます。
山田氏:創業時ではなくても事業ごとの立ち上げフェーズで、真野さんがおっしゃったようなコミュニティをきっかけにしたリファラル採用は効果的だと思いました。会社全体でリファラルを進める前に、組織やチームで先んじてやるという目線があってもいいのではないでしょうか。
組織拡大による採用手法の変化とは?
佐々木:組織が大きくなると、リファラルだけでは不足するのではないかと思われますが、どのように乗り越えて来られたのでしょうか。
真野氏:リファラル以外の採用経路を活用して組織拡大を加速させていくことを、事業計画に盛り込みました。実際に100名以上の規模になってからはエージェント経由の採用が非常に増えています。ただ、150名ほどの組織になったあたりで、エージェント経由に比べ、リファラルで入社した社員の方がエンゲージメントが高い傾向にあることが分かってきました。この仮説をもとにして、モチベーションクラウドなどのデータを活用し、先んじで課題に対処してきました。
日々忙しい社員に対してリファラルの協力をお願いすることはとても難しいですが、自身が信頼する人と一緒に仕事をすることの楽しさや共に成長できる喜び、そしてそれが会社のカルチャーを形作る原点になることを伝え、理解を促しています。
まとめ
リファラル採用の大きな利点のひとつは、社員同士の信頼関係によるエンゲージメントの向上ではないでしょうか。そのためミッションやバリューに対する共通認識を高め、リファラルを推進する文化の醸成が大切になります。
SUPER STUDIOの成功例をヒントに、各企業様において組織拡大のひとつの重要な施策としてリファラル採用を実践していただければ幸いです。