セミナーレポート
2022年7月28日 開催

個の時代におけるキャリアのあり方と、採用の未来

一つの企業を定年まで勤め上げる終身雇用において、キャリアといえば組織内キャリアを想起することが一般的な時代がありました。しかし今、少子化や環境の劇的な変化などにより、自立型キャリアへの転換が求められています。

個人はキャリアをどのように捉え向き合っていくのか、企業は今後どのような採用を求められるのか、今回は7月28日に行われた「Professional Recruiting Conference Vol.4 〜 グローバルに見る採用・キャリアの最前線 〜」から、「個の時代におけるキャリアのあり方と、採用の未来」をテーマにお送りしたセッションについて、株式会社YeeYの島田 由香氏と、法政大学キャリアデザイン学部の田中 研之輔氏によるパネルディスカッションのダイジェストをお送りいたします。

登壇者

島田 由香(しまだ・ゆか)

株式会社YeeY共同創業者/ 代表取締役 /
アステリア株式会社CWO

慶應義塾大学卒業後、パソナを経て、米国コロンビア大学大学院にて組織心理学修士号取得。日本GEにて人事マネジャーを経験し、2008年ユニリーバ・ジャパン入社。2014年より取締役人事総務本部長に就任。人のモチベーションに着目し「WAA」など独自の人事施策を多数実行、同社はForbes WOMEN AWARDを3年連続受賞した。2017年に株式会社YeeYを共同創業し代表取締役に就任。

田中 研之輔(たなか・けんのすけ)

法政大学 キャリアデザイン学部 教授

一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/株式会社キャリアデザイン代表取締役/UC. Berkeley元客員研究員/University of Melbourne元客員研究員/日本学術振興会特別研究員SPDUC. Berkeley元客員研究員 University of Melbourne元客員研究員 日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学 /博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を33社歴任。個人投資家。著書29冊。プログラム開発・新規事業開発を得意とする。

小川 泰正(おがわ・やすまさ)

執行役員

2015年入社。執行役員として法人向け名刺管理サービス「Sansan」のカスタマーサクセス、マーケティング等を牽引。2020年よりEight事業部にて、「Eight Career Design」事業の推進に従事。2021年よりEnterprise Solutions部を新設。

個人のキャリアへの謳歌が社会問題を解決し、より良い未来につながる

小川「まずは『個人のキャリアにおいて重視すべきこと』について、お二人の経験を踏まえてお話しいただけますか」

島田氏「キャリアとは先を見て選んでいくのではなく、自分の後ろにできているものだと思っています。自分の好きなこと、興味あること、ワクワクすることを選んだ結果、後ろを振り向いたときにできている道を定義したものであり、良いキャリアのために、自分にいいものを選んでいく。そのためには自分を知ることが大切だと思います

田中氏「プロティアンもウェルビーイングも社会的役割があると思っています。それは『働くことに対する私たちの理解は間違っていたのかもしれない』と気づかせることです。

これまで私たちは働くことを考える時、肩書や会社名が先に出てくるような、『組織内の認識』として考えていたと思います。これからは働くことを存在で考える、つまり自らの中に血肉化されたものであり、今この瞬間だと捉え直すことが重要だと思っています。

コロナ禍で場所を問わないハイブリットワークになった今、働くことを認識論で考えることにねじれが生じ、大きな課題が生まれています。その上で個人のキャリアにおいては、本人の中でいかなる経験が血肉化されているのかをみんなに共有したほうがいいと思っています。それは組織に預けるのではなく、自分たちで育て上げていく。それが生きることではないでしょうか。

こうして個人のキャリアを謳歌し、皆さんの日常の中にある問題をひとつ解決していこうという個人のキャリア形成におけるアクションが社会問題を解決し、よりよい未来を作っていくことに繋がるのです

評価ではないキャリアメンテナンスのあり方

小川「評価がキャリアを推し量る上でのひとつのものさしになる一方で、キャリアのセルフメンテナンスにおいて個人が自主的にできることはありますか」

田中氏「キャリア開発の視点において、同一業務を同じメンバーで長年続けると、キャリア・プラトー(停滞)に陥りやすいとされています。しかし社会に出ると、40年間職場が変わらない人もいる。だから自分でメンテナンスやセルフチェックを行い、自らがキャリアをアップデートしていく必要があります。私の場合は自らのキャリアを築くためにできる限り月に1回海外に出て、環境を変えるという越境経験をしています」

今後企業側に求められる『評価』の捉え方

島田氏「まず、評価ってネガティブなイメージをさせてしまうことが課題かなと思っています。『昇進に結びつく』『誰かにレッテルをはられる』というものではなく、その人がどんな素敵なことをして、どんな強みや可能性を持っていて、それが今年どれくらい見えたんだよと言ってあげる場だと思っています。

田中氏「企業側は見えるものを評価してきました。これからは、見えないものをどこまで勇気を持って『その人のこれからだ』と認識していけるかがポイントになると思います。その人の人的資本をどこまで応援するか。その人がより主体的に業務に向き合えるよう、どのようにハッピーな環境を作り上げるかどうか。そこに向かって企業は取り組めばいいし、実際にそうした企業は増えていますね」

個人のキャリアが変化する中で企業が向き合うべきこと

島田氏「前職で組織に20数年在籍し、人事という素敵な仕事をしてきて常に思っていたのは、『何のためにこの会社は存在しているのか』ということです。

『会社』という生き物はいません。世の中に前向きな影響力を与えることを誰かが思いついて、そこに賛同する人が現れて会社が設立され、それが認められたり望まれたりしたから会社の今があるのではと思います。だからこそ『この会社が何のために存在するのか』という点に立ち返って、自分がどういう距離感を保つのかという部分があれば、今やるべきことは自ずと判断できるのではないでしょうか

田中氏「この転換期の中で、組織というものはなくて、私たちが自分たちの可能性を高め合うためのまとまりなんだと思います。そういう会社は伸びるし、風通しも良くなります。

あと、伝え合うことは大事ですね。これからのキャリア形成に関しても『私はこう思う、だからこういうことをやりたい』を言語化して組織や一緒に働く人に対して伝えていくことは、転換期だからこそ大事なことです

島田氏「『できない』という言葉が出たときに気づいてほしいのが『できないからしない』ということ。『しない』と決めてしないのはいいが、『できない』だと、どこかに理由を作って曖昧になってしまいます。『できないからしない」という覚悟を決めてほしい。」

これから求められる採用のあり方

小川「一方で企業目線で、お二人は採用において大切にしていた点、ここは譲らないほうがいいんじゃないかというポイントを教えて下さい」

島田氏「採用って、個々のやり方や細かな行き先は違っていても、一緒の船に乗って同じ方向に向かうための場だと思っています。ありのままを出す場が採用。本当に思っていることを出せるような場作りができるかどうかがポイントだと思います。

田中氏「私は『採用って選ぶことや引き抜くことではなく、そのプロセスを通じてその人を育てることであり、お互い成長し合うことである』と伝えています。その価値観に立てば、もはや人材を各社で取り合うことが採用、という話ではないと思います。その上で同じ方向に向かって成し遂げたい世界を作れるかどうかは、情報を透明にして発信しているのかがポイントになります。

統合レポートやIRは外部向けへの透明性の高い信用情報ですが、これらの公開情報に加えてもっと生々しく等身大で、その人がなにやってるのかといった『働くことのリアルを伝えるような情報』を配信するのは有効ですね。

また採用を点ではなくプロセスで考えることは大切です。まず業務契約でやってみる。それはお互いの成長を促す機会であり、一緒になることもあれば別々の船に乗ることもある。それがこれからの採用のあり方になります。

これからの採用とキャリアへの向き合い方

採用だけでなく、評価のあり方や人事担当者が変えるべき行動など、キャリアについて多様な意見が飛び交いました。現状をすぐに変えることは難しいかもしれませんが、中長期的に状況を変えるために、まずは個人のキャリアや何気ない行動、言葉に気を配り、共有することが第一歩となりそうです。

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