セミナーレポート
2022年8月30日 開催

希少性の高いSaaS業界経験者の母集団形成術とは?

2020年から2025年にかけて約2倍に成長する見込みがあると言われるSaaS市場。しかし優秀なSaaSの業界経験者の採用は激化の一途をたどっています。

今回は組織のフェーズに合わせたペルソナ設計や手法・テクニックで母集団を形成していくかについて、HeaR株式会社COOの高谷 匠氏にご講演いただきました。その内容をダイジェストでご紹介します。

登壇者

HeaR株式会社 COO

高谷 匠

大学卒業後、株式会社リクルートに新卒入社。ゼクシィの事業部に配属し、結婚式場やホテルの婚礼事業のプロモーション領域におけるコンサルティングを実施。その後、2019年5月にHeaR株式会社へとジョイン。社内では新規事業立ち上げや組織体制の確立に従事しつつ、累計50社以上の中小企業から大企業まで様々な規模及び業種における採用コンサルティングを手がける。現在はCOOとして、採用コンサルティング事業・副業エージェント事業である”タメスワーク”を牽引する。

SaaS人材の転職市場

高谷氏:コロナ禍以降、営業職は技術系職、専門職に次いで倍率の高い職種になっています。なかでもインサイドセールスやカスタマーサクセスなどのSaaSビジネス職は直近2〜3年で7倍にまで膨れ上がっています。

高谷氏:実際に、営業職経験者の中でもインサイドセールスの仕事内容を経験したことのない方は全体の4割いるそうです。The Model(※)やデジタルマーケティングに関しても同様の状況が起こっている中で、ここではSaaS人材を採用するためにはどんなことをすればいいのかについてお伝えします。

※The Model:セールスフォース・ドットコム社で実践されている営業の分業体制。

SaaS人材獲得のための戦略設定6Step

高谷氏:各社の組織規模や事業フェーズによって優先順位は変わりますが、SaaS人材確保のための6Stepをまとめました。

<SaaS人材獲得のための戦略設定6Step>

STEP.1 事業戦略と連動した採用計画の立案
STEP.2 ペルソナ設計
STEP.3 ポジショニングマップの作成
STEP.4 PoDの設計
STEP.5 ブランディング設計
STEP.6 CX戦略の策定

高谷氏:まずどの企業にも進めていただきたいのが「ペルソナ設計」と「PoDの設計」です。

高谷氏:20名を超えた企業であれば「ブランディング設計」や「CX戦略の策定」にも着手しておきましょう。

「事業戦略と連動した採用計画の立案」と「ポジショニングマップの作成」については、優先順位がそれほど高いわけではありません。50名くらいを超えたタイミングで改めて整理するのがいいでしょう。

貴社の状況を照らし合わせ、優先順位の高いものから着手していただきたいなと思います。

高谷氏:ここでは優先順位の高い「ペルソナ設計」と「PoDの設計」について詳しくご紹介します。

ペルソナ設計は求職者のキャリア課題に着目を

高谷氏:採用での悩みとして「どの媒体を使うか」「スカウト文面をどうするか」などが挙げられがちですが、大切なのは「その中にいる求職者全員に好かれる採用活動」ではありません。「ペルソナとなるような人」「自社の採用ターゲットとして狙いたい人」に、ピンポイントで振り向いてもらうためのクリティカルな発信をすることです。

つまり自社として狙いたいターゲット像を具体的に定義しておく必要があります。

中でも「キャリア課題」は一番優先順位高く整理しておきたい項目です。転職活動中の求職者は、現職に何かしらのキャリア課題を抱いているから転職しようとしているはずです。ですから、自社はどういうキャリア課題を抱えている人と相性がいいかを整理しておきましょう。

またペルソナの解像度を上げるためには、社内で活躍されている営業やマーケティングの方に「転職しようとしたきっかけ」や「自社に決めた最終的な動機」をヒアリングするのがおすすめです。つまり自社の社員を最も参考にするべきだと思います。

例外もありますが、基本的には社内でペルソナに近い方が1人以上いる場合は、社内を参考にすべきです。

以下は弊社が入社1年目から2年目の社員向けに用意しているアンケートです。

高谷氏:質問は「応募のきっかけとなった自社の魅力を教えてください」「内定を承諾する決め手となった魅力ってなんですか」、また株式会社リンクアンドモチベーション社が展開されている「魅力の4P」それぞれに紐づいて自社を採点してくださいといったものもあります。

ここでは「何がきっかけでペルソナが自社に応募して、何が決め手で採用上の出口である内定を承諾してくれたのか」というところも同様の切り口で聞きに行くことが大切です。

応募時と内定承諾時は自社の魅力をもとに、最終的にキャリアの意志決定をすることが多い。だからこそ、「今の社内の人たちが、自社の何に惹かれて応募したのか」を吸い上げ、ペルソナのキャリア課題や価値観・指向性に当てはめていくのがスムーズかと思います。

以下はSaaS企業との相性が良いマーケターのタイプをピックアップしました。自社との相性を考えた上で戦略を組み立てていただければなと思います。

<転職市場によく現れるマーケター>
▼事業会社志向タイプ
・志向:代理店から事業会社に転職したい
・経験:広告運用とCRMが主
・企業例:オプト、セプテーニ

▼SaaSでスキルアップタイプ
・志向:SaaS系の企業の中で転職したい
・経験:MAツール運用、 ウェビナー
・企業例:Sansan、freee、ラクス

▼マーケ施策広げたいタイプ
・志向:マーケターとしての幅を広げたい
・経験:広告運用やSEOのみの経験
・企業例:アイレップ、Speee、ナイル等

PODの設計はフレームワーク活用がおすすめ

高谷氏:PoDとは「Point Of Defference」の略で、強度の高い差別化ポイントを指します。つまり、先程定義したペルソナが自社に対して魅力に感じてくれる「競合には打ち出せない特有の強み・魅力」がPoDです。

高谷氏:また「魅力の4P」というフレームワークを使って明確にしていきましょう。

母集団形成を成功させる8つの施策

高谷氏:ここからは、具体的にまずはこういうことをやっていきましょうというお話に進んでいきます。組織規模・事業フェーズによって優先順位を分けて記載しました。

<母集団形成を成功させる8つの施策>

  1. わかりやすい求人票を作成する
  2. 適切な採用媒体を選定する
  3. エージェントコントロールを強化する
  4. 採用広報記事で発信する
  5. 採用ピッチ資料を作成する
  6. ウェビナーを開催する
  7. SNSで発信する
  8. リファラル採用を強化する

高谷氏:この中からかいつまんでご紹介します。

採用広報記事はタイトルが重要

高谷氏:最近採用サイトで記事を運用する企業がかなり増えているイメージがあります。その際に重要なのは、「クリックしてみたい」と思わせる魅力的なタイトルや企画を打ち出しているかです。あまり知られていない会社でもこの方法は有効です。

採用ピッチ資料の活用は必須

高谷氏:採用ピッチ資料は、入社したらこういう事業の中で、自分はこういう業務を具体的に担っていくという、入社後のイメージをより具体的に持ってもらうためのものです。具体的な事例は、さまざまな企業の採用ピッチ資料をご紹介した弊社の記事「【保存版】採用ピッチ資料100選|作り方〜制作ポイントはコレ!」をご覧いただければと思います。

高谷氏:SaaS採用だけでなく、リファラル採用を進めている企業は採用ピッチ資料をかけ合わせて使っているケースが多いです。「わざわざ会って口頭で」よりも「これを見て」とお渡しして「興味を持ったらお話しさせてほしい」とか、アポを取って実際に会うまでに資料を読み込んでおいてもらい、ある程度自社を理解いただいた上でお話をしたほうがスムーズです。

SNSはSaaS採用に有効

高谷氏:企業の考え方にもよりますが、SNSはSaaS人材の採用においてかなり有効な手段です。

例えばSaaS企業に勤めている方々は情報感度が非常に高い傾向にあります。特に、SNS上でマーケの持論を展開している方の情報を取りに行くという姿勢の方が多いので、SNS経由で「自社を認知してもらう」とか「ペルソナにアプローチしていく」というのは、SaaS領域に関してはかなり有効です。

リファラル採用はプロジェクトチームの編成を

まずは自分の言葉で自社の魅力を語れる人や意欲的に動いてくれる人5〜6名ほどでチームを編成し、一旦「一緒に働きたい」と思った方をひたすらリストアップしてもらう。その方々に採用ピッチ資料をお渡しして、「まずはちょっと会って話したい」「一緒にご飯行こう」というのを徹底して動ける組織が、結局リファラル採用としては成功する印象がありますね。

まとめ

SaaS人材の採用はペルソナ設計や自社の強みの再認識、キャリア課題など、自社について改めて見直すことが必要だということがわかりました。一方でSaaS人材採用は長期間に渡る採用ブランディングや潜在層へのスカウトなど、企業の力強さと運用力にかかっていると、高谷氏はいいます。短期的な結果ではなく中長期に渡る採用計画を策定し、SaaS人材の採用に望みましょう。

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