セミナーレポート
2022年7月28日 開催

変化に挑み、世界を牽引する、マイクロソフトの採用戦略

第4次産業革命が到来し、世界が変革を求められている今。IoT・人工知能・5G・クラウド・ビッグデータなど、さまざまなデジタル技術が発展し、ポストコロナの中でデジタル化はますます加速しています。急速に技術が発達するため、テクノロジーはすぐに陳腐化し、競合優位性がなくなっていく時代において、企業はどう勝ち残っていくか、が大きな課題となっています。

技術への変化に対応することが急務となる中、技術変化のために必要な経営戦略の見直しのカギとなるのが人材戦略です。今回は2022年7月28日に行われた「Professional Recruiting Conference Vol.4」の中から、大きな変化に挑みながら、世界を牽引し続けている日本マイクロソフト株式会社の大渡 郁佳氏にご登壇いただいたセミナーの内容をダイジェストでご紹介します。

登壇者

大渡 郁佳 (おおわたり・ふみか)

日本マイクロソフト株式会社 人事本部 シニアHRマネージャー

2011年マイクロソフトに入社。人事部に従事する。2013年長女を出産し産休育休を経て、HRビジネスパートナーとして復帰。2016〜2019年までシンガポールにてAsia Pacific HR勤務。これまで採用、HR事業企画、HRBPなどを経験。

マイクロソフトの変遷

マイクロソフトの始まりから悪の帝国期を経た低迷期まで

大渡氏:マイクロソフトは1975年にビル・ゲイツとポール・アレンによって創業した会社です。当時のマイクロソフトは、新しいテクノロジーを持つ会社を買収して取り込んでは急速に会社を大きくしていました。社内競争を煽り、悪の帝国を作っていると揶揄されることもあったほどです。

ところが、2007年にAppleがiPhoneを世に送り出すと、IT業界が急速にモバイルの世界へと流れていきました。当時のマイクロソフトは、PCの出荷台数がメインのビジネスだったため、焦った経営陣はモバイルへの転換を図るため、モバイルビジネス会社を買収し、社内競争へと駆り立てていきます。

しかし、ビジネスのノウハウを活かすための蓄積が足らず、さまざまなビジネスが上手くいかなくなっていき、「マイクロソフトは終わった」と囁かれて株価も低迷。私が入社した2011年はまだ低迷している時代でした。

大渡氏:マイクロソフトが転機を迎えたのは、2014年です。3代目CEOサティア・ナデラが就任し、これまでのアプローチを大きく変革させました。マイクロソフト帝国として自社に取り込んで競わせる荒んだ企業カルチャーから、素晴らしい製品やサービスを持つ会社とコラボレーションする方向へと切り替えたのです。

コラボレーションへの方針転換は社外に限ったことではなく、社内における個人の仕事のやり方についても変化をもたらしています。それまでは社内競争のため、自分中心のカルチャーがありました。そこで、他の社員・隣のチーム・別組織、それぞれの人とのコラボレーションを促進し、Win-Winになるようなカルチャーに大きく舵を切ったのです。

大きく変わったマイクロソフトのミッション

大渡氏:中でも大きく変更したのはミッションです。

▼変更前のミッション
ビル・ゲイツのミッション「すべての家庭・オフィスの机の上に一台のコンピューターを」

▼変更後のミッション
「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」

新しいミッションは、私たちの会社の基盤に立ち返るものです。永続的な活動のため、改革・革新していく。ミッションの達成は、私たちの力だけではできないため、コラボレーションを促進することにつながっていきました。

プロフェッショナルとしての人事の役割

大渡氏:私たち人事は、ビジネスをサポートする役割を担っているわけではありません。ビジネスパートナーとして、社員が最高の仕事をし、一人ひとりが望むキャリアを築けるように人事戦略を設定し、私たちの専門的な知見を発揮すること。ここに重きを置いて日々過ごしています。

HRとしての4つの注力領域

大渡氏:人事としてのミッションは、「地球上のすべての人と組織がより多くを達成するためにカを与える人々を支援します」というものです。ミッション達成に向かって自分たちが人事のプロフェッショナルとして変わっていくために、4つの重点領域を常に念頭においた動き方、目標の設定をしています。

<HRとしての4つの注力領域>
1 人事施策を戦略的にドライブ(カルチャー ダイバーシティなど)
2 Data(データ)にもとづくEvidence(エビデンス)を活用した意思決定
3 人事プロセスの簡易化/標準化されたセルフサービスの提供
4 社員のスキル強化および学習支援

人事はサポート役ではなく、戦略的に人事施策を行うビジネスのパートナーであり、会社にとっての牽引役です。私たちは、その責任感をもって業務に臨んでいます。人事施策を行ううえで、非常に重要なのが、意思決定のためにどのデータを使うのかということです。私たち人事がDX(デジタルトランスフォーメーション)化のため、大きなスキルの転換を迫られています。

また、マイクロソフトの社員はさまざまな国にいますが、同じようなサービスを受けられるように、ハイスタンダードなプロセスをどの国でも持ち続けるということも大切です。他にも、IT業界は流れが早いので、社員がいち早く必要なスキルを身に着けられるように環境を整える必要があると考えています。

大きく変革したマイクロソフトの中途採用手法

ダイレクト・ソーシングモデルの導入

大渡氏:以前、中途採用は紹介会社経由がほとんどでした。今は、自分たちのチームで候補者集めからアプローチまで行う、ダイレクト・ソーシングモデルを導入しています。

ダイレクト・ソーシング自体は2016年に導入を開始していますが、当初はプロジェクト単位でスタートし、小さなチームでノウハウを貯めていくようにアプローチしていきました。2019年頃までにかけてチームを拡大していく中で、2017年には社員紹介の活用を始め、紹介会社様経由の採用と併用しながら施策を進めています。

さらに2019年に開始したプロフェッショナルSNSが発展してきたことにより、多くの潜在候補者の方へアプローチできるようになり、今では紹介会社様経由の採用は縮小している状態です。

IT業界では、ダイレクト・ソーシングモデルはすでにあまり珍しいモデルではなくなってきているかと思います。そのため、より早いスピードで、より魅力的なオファーにつなげられるように市場や候補者の動向を理解してビジネスに正しくつなげていくことが重要であると考えています。

ビジネス部門が採用のオーナーシップを取る採用体制

大渡氏:私たちの採用体制は、3つの役割に分けて組んでいます。

<マイクロソフトの採用体制>
・採用のオーナーシップ:ビジネス部門
・採用プロセスのリード:リクルーター
・パイプライン創出と魅力付け:タレントソーサー

リクルーターは、ポジションが空いてから候補者の選定をし、入社するまでのすべてのプロセスをリードする役割。タレントソーサーは、空きポジションにベストな人材を採用するべく、パイプラインを創って、マイクロソフトを次の職場として選んでもらえるように魅力付けを行う役割を担っています。

社員紹介をメインに複数手段を講じている採用手法

大渡氏:私たちが活発に利用しているのが社員紹介です。これまでの実績から、以前一緒に仕事をしたことがある方からの評判が高いと、入社後にも高いパフォーマンスを発揮していただけるという裏付けが取れています。そこで、常に社員には、マイクロソフトに可能性のある方を紹介してもらえるように声掛けをしています。

他にも、プロフェッショナルSNSなどを通じてダイレクトスカウトを行い、直接、潜在候補者の方にアプローチする機会を増やしています。また、媒体記事や採用イベントなどは、多くの候補者を集めたいときの手法として用いています。

中途採用における人事の役割と大切にしたい3つのこと

大渡氏:中途採用の推進に当たっては、以下の3つを常に心がけています。

<中途採用における優先事項>
・関連部署の強固なパートナーシップ
・候補者・市場理解とオファリング
・魅力付け

私たちは、人事の専門家として現場のビジネスを理解してパートナーシップを結んで採用を成功させていく責任を持っています。そのため、私たち人事が現場のビジネスや、募集ポジションに求められる責任範囲を、より深く理解することが重要なのです。

「なぜ転職をしたいと思っているのか」「どういう動機を持っている人がマイクロソフトを選んでくれるのか」「候補者が今後のキャリアをどう考えているか」まで深堀りすること。そして、私たち選ばれる側がどこまで理解できるかどうかが、人材獲得競争のカギを握っていると思っています。

また、候補者の方たちが考えている人生の中にマイクロソフトが何かしらの価値をもたらせられるよう、きちんとした魅力付けができることもとても重要です。

その点において、ダイレクト・ソーシングは、候補者へ直接魅力付けができる大きなメリットをもっています。ダイレクト・ソーシングを取り入れたことで、自社での働きがいや目指していること、募集ポジションやビジネスの面白さがどこにあるか等について、私たちの言葉で候補者にお話しできるようになりました。これにより、潜在的な候補者にもアプローチできるようになっています。

人事がビジネスをきちんと語り、現場がカルチャーを語る。候補者の人生をちゃんとお迎えしてともに歩みたいという情熱をきちんと持ち続けられるかどうか。それができてはじめて候補者の方にマイクロソフトを選んでもらえると考えています。

まとめ

人事としてのミッションを人材戦略に落とし込み、候補者の方も自分たちの言葉で語れるようになることを大切にされているマイクロソフトの採用戦略がよくわかりました。

その採用手法の中でも多く取り入れられているという社員紹介がスムーズになるツールとして活用いただけるのがEight Career Designのつながりスカウトです。明確なスカウトの前段階として、ゆるやかにつながるアプローチが可能で、社員から意見も聞けるため、ミスマッチが少なくなるメリットもあります。

社員紹介が進めやすくなるEight Career Designによるプロフェッショナルダイレクトリクルーティングにご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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