100円ショップ「ダイソー」を中心に意欲的にグローバルな出店を進めている株式会社大創産業。トップ交代以降はダイレクトリクルーティングによる人材採用や社員のキャリア形成、エンゲージメント向上などの新たな施策を次々と打ち出し、右肩上がりの成長を実現しています。
2022年7月28日に行われた「Professional Recruiting Conference Vol.4 〜 グローバルに見る採用・キャリアの最前線 〜」では、転換期を超えて新たな人材戦略により成功を収めている株式会社大創産業の寒川 健史氏にご登壇いただき、採用におけるダイナミックな変革についてお話いただきました。
登壇者
寒川 健史(そうがわ・たけし)
株式会社大創産業 人事・総務・法務本部
人事部 採用課課長
2019年大創産業入社。人事部にて新卒・中途採用業務及びマネジメントを担当。
グローバルに挑む、ダイソーが実践する人材採用
感動価格、感動品質で世界26の国と地域に事業を拡大
寒川氏:大創産業は「世界中の人々の生活をワンプライスで豊かに変える 感動価格、感動品質」という社是のもと、人材の採用戦略においてもこのステートメントを達成するために企画運営をしています。
寒川氏:また現在25の国と地域に出店しており、国内外を合わせて6217店舗を展開しています。
寒川氏:今後はさらに海外拠点を増やしていくため、グローバル人材の採用も積極的にチャレンジしていこうと考えております。
ターニングポイントとなったトップの交代
寒川氏:前社長は40年以上トップを務め、ここまでの規模に会社を育て上げました。その間の弊社の風土はトップで走り続ける社長と、目の前の業務を愚直に一生懸命に取り組むタイプの社員が多いという特徴がありました。全員で結束して業務を進めるという場面では強みを発揮できますが、自身で考え、判断することができる社員が育ちにくい風土がありました。
新社長が掲げた2030年ビジョン
寒川氏:2018年に就任した現社長の矢野 靖二は民間企業での勤務経験があり、柔軟な視点から今までのやり方で見直すべき点や改善点を次々とピックアップして、2030年ビジョンを全社に向けて提示しました。
その最終的な目標は2030年に事業規模を今以上に拡大させることです。
転換期における人材面での課題感
寒川氏:その2030年ビジョンの中で人材に関しても、大きく4つ課題が挙げられました。
<課題感>
1.実直さはありつつ、トップダウン重視で言われたことをやる風土
2.若手の育成の伸び悩み
3.ミドルマネジメント層の不足
4.事業成長に直結する採用をしきれていない
寒川氏:そこで人材面で重要視したのは「多数精鋭」であり、3つのポイントによる人材組織の形成です。
1.自律=自らで規範を立てられる
2.自考=自分で考え行動できる人
3.協働=周りを巻き込んで仕事をする
新たな人材戦略のキーワードは「育成」と「採用」
寒川氏:新社長のもと、新しい人材組織を形成するための戦略として「育成」と「採用」の2点を重要視し取り組み始めました。
「育成」=社員を育てる環境ややりがいを大切にする風土へ
寒川氏:それまでの大創産業はお客様に多くの商品をお届けすることと、多くの店舗を出店していくことに注力していました。
今後はコーポレートロゴのスリーアローズでも表現している通り、商品とお客様に加え社員の育成に力を入れて行く方向に転換したのです。
ここで株式会社グロービズさんにお願いし、現場の学びの促進や将来の幹部候補育成のための勉強会を立ち上げました。
弊社の「だんぜん!ダイソー」というスローガンから取り「だんぜん!ブートキャンプ」と名付け、本部長課長クラスからリーダー候補クラスまで、それぞれ選抜したメンバーを集めて研修を行っています。
ここでは主にクリティカルシンキングなどの論理的な思考の組み方などを学びました。
このプログラムにより2030年ビジョンの達成に向けて組織で前進する手ごたえをつかみ、仕事のやりがいや社員を大切に育てる風土が広がり始めています。
ダイレクトリクルーティングなどの積極導入で攻めの採用へ
寒川氏:それまでの採用はまったく戦略的ではありませんでした。そこで2030年ビジョンでは”経営方針を取り入れた採用”へと改善し、強化策に取り組みました。
戦略ポイント1.求める人材を見直し、ミッションに共感する本気の人材を重要視
寒川氏:候補者のやりたいことが弊社で実現できるかなどを本音で話し、候補者に見極めてもらうことで離職率の低下につなげています。実際、今年度の新卒では退職者ゼロとなっており、効果を実感しているところです。
面接では2030年ビジョンや今後の海外展開などの話をして、本気で腹を据えて取り組んでいただけるかどうかを見極めていただきます。その上で弊社を希望される方が一番マッチすると考えています。
特に弊社のミッションに共感してもらえるかどうかは非常に重要なポイントです。
戦略ポイント2.プロフェッショナル人材を採用する攻めの手法への転換
寒川氏:中途採用ではダイレクトリクルーティングを積極的に活用するようになりました。そこでプロフェッショナルなキャリアを持つ人材に対して、潜在層までしっかりとアプローチし、将来のマネージャー候補として採用を実現しています。
特に商品企画担当者の募集では、プライベートブランドを持つ企業での商品企画経験者となると非常に母数が少ないのが現状です。
エージェントにはなかなか希望の経歴の方がいないので、Eight Career Designを始めとしたダイレクトリクルーティングを活用し始めました。
ダイレクトリクルーティングでは転職活動をしていない潜在層までもアプローチすることができ、実際にEight Career DesignからDX担当と物流担当の2名を採用しています。
戦略ポイント3.現場と連携した採用体制を構築
寒川氏:一方で各部署からあがる人材要件についても、本当に必要な要件なのかどうかなど、採用担当者は社内営業マンのような立場で各部署としっかりとコミュニケーションを取り、単なる御用聞きにならないように心がけています。
戦略ポイント4.社員のキャリアを大切にした制度づくり
寒川氏:さらに「自己申告制度」により、年に一度社員の希望をヒアリングし、社員が主体的にキャリアの選択を実施できる状況を形成しました。
これは採用後の定着も見据えた試みです。
採用戦略の結果、見えてきたもの
寒川氏:2018年の転換期以降新たに取り組んできたことは、「自分で考えて動いているか」「ミッションに共感し、そのミッションをクリアしていける人材を中途で採用していく」「担当者は社内営業も含め攻めの採用を実現する」などです。
中途採用では小売業出身にはこだわらなくなったという点も大きいです。人材の必要な条件を深堀すると小売業経験の有無よりも、ミッションに対しての共感度の方がよりスキルを活かしてもらえることが分かりました。
今後の展望
寒川氏:今後の施策では、特に社員の待遇面の改善に力を入れて取り組んでいるところです。
例えば今年度からは公休日を5日間増やしました。また休憩時間を現実的な働き方に合わせて15分短縮し、拘束時間を短くしました。
さらに近年は海外のエージェントとのネットワークを構築して、新卒でグローバル人材の採用を進めています。
今後も海外での出店が増加する予定です。そこで語学力や留学経験のある方、また外国籍の方なども社員として採用していきたいと考えています。もちろん入社後の教育体制も整える必要があり、現在も人事で準備しているところです。
当社のミッションの軸は、ぶらさず採用競争力を上げていくために、現在働いている社員に対してしっかりと還元できる待遇を構築しながら、グローバル人材の採用を見据えたチャレンジを今後も続けていきたいと思います。