昨今、企業の採用シーンで注目度が急上昇しているキーワードが「採用広報」です。
転職市場では労働人口の減少やDX・AIといった高い専門性を有する人材へのニーズの高まりなど、激変する市場背景にともない、企業は新しい採用手法や雇用方法へと転換を迫られ、さらに有効な施策を求める現場の声が高まっています。
そこで効果的な採用広報として、ターゲットに合わせたコンテンツ制作や、読まれる(バズる)記事を作るポイントなどについて、多くの企業が採用広報に活用するビジネスメディア「FastGrow」を運営するスローガン株式会社の西川ジョニー雄介氏をお迎えしたセミナーをご紹介します。
登壇者

西川 ジョニー 雄介
(にしかわ・ジョニー・ゆうすけ)
スローガン株式会社 執行役員
FastGrow事業部 事業部長兼編集長
2011年モバイルファクトリー新卒入社。その後、社員数3名のアッションに入社し、執行役員を務める。2015年7月にスローガン参画後は、学生向けセミナー講師、就活メディア「FastGrow」の立ち上げを行う。2017年2月より「FastGrow」を構想し責任者を務め、カオナビ、シタテル、オプト、パナソニックなどの採用ブランディングプロジェクトでは、ブランドコンセプト策定から採用広報戦略の立案、記事企画までを一手に担当している。

橋本剛(はしもと・ごう)
Sansan株式会社 Eight事業部 Eight Career部
マネージャー
新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社し、Tポイント提携営業やデータベースマーケティング事業に従事。2019年にSansan入社。「Eight Career Design」立ち上げ期にセールス面を中心に携わる。現在はEight Career Designのマーケティング責任者を務める。
自社の魅力を正しく認知してもらう「採用広報」が重要
始めに弊社の橋本剛から、転職市場の現状や新しいアプローチの方法などについて解説します。
1.ビジネスのDX化が進み、AI・DXなどの高度な専門性を保有する人材のニーズの高まり
2.コロナ禍の影響を受けて、“ポテンシャル人材”から“即戦力人材”採用へのシフト
3.「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への移行
橋本:こうした中で優秀な人材を迎えるための方法として、すでに転職の意向を示している顕在層に対するアプローチだけでは限界を迎えています。現状は、現職で活躍する転職潜在層へのアプローチが必須となってきました。
その中でもダイレクトリクルーティングなど、候補者へ直接アプローチする方法が主流になりつつあります。

橋本:転職潜在層にアプローチする際には非常に大切なポイントがふたつあります。
【転職潜在層アプローチで成功するポイント】
1.優秀人材に対しては他社に先んじて直接アプローチする
2.自社の魅力を正しい姿で認知してもらう
ダイレクトリクルーティングなどでは、まず他社よりも早くそして直接アプローチすることが重要です。そして今回テーマアップさせていただいた「採用広報」で自社についての認知を高めてもらうことで、採用率のアップや社内エンゲージメント向上へとつなげることができます。
橋本:しかし特に2についてはノウハウがない、うまくいかないなど悩んでおられる企業様が多いと思われますので、今回はスローガン株式会社の西川様から自社の魅力を正しい姿で認知してもらうための「採用広報」について詳細なお話をしていただきます。
SNSで読まれるコンテンツの作り方
西川氏:ありがとうございます。では本日は私がスローガン株式会社に入社して7年、FastGrowを立ち上げてから5年で培ってきた、採用広報の「読まれるためのノウハウTips」をご紹介したいと思います。
FastGrowとは
西川氏:「FastGrow」は新産業領域やテクノロジー領域、ベンチャー企業の中でも新規事業にフォーカスして、特定のテーマや人物を取材し深彫りしたコンテンツを発信しており、特に活躍中の起業家・経営層と若手経営人材とをつなぐビジネスコミュニティとなっています。
採用広報の基本
西川氏:それでは採用広報がなぜ重要なのかという解説になります。さきほど橋本さんからもお話いただきましたが、重要なポイントは以下の3点です。
1.自社の認知度の向上
2.採用候補者をアトラクトする
3.社内向けエンゲージメントの向上

西川氏:なぜ採用広報に取り組むのかというと、その企業の認知度を高めることにヒットしてくるからです。あるいは、社名がどれだけ知られていても、間違った認知やイメージを持たれている可能性もあるので、そこを是正して正しい認知を広めるという観点もあります。
認知が高まるだけでなく、たとえ多くの人に読まれるコンテンツではなくても、選考中の方々に対してはアトラクト(惹きつけ)の効果があり、社内向けでもエンゲージメントを高めることにつながることが分かっています。
特に自社で活躍しているメンバーに採用広報としての取材や企画に参加して、第三者に向けて自社の魅力や自分のキャリアなどを語ってもらうと、取材後のその人のモチベーションが非常に高くなる傾向があると言われています。その結果リファラル採用に協力してくれるなど、社内エンゲージメント向上への高い効果も見られます。
コンテンツ企画の基本
西川氏:採用広報に活用するメディアには下記の3種類があります。
1.アーンドメディア(他社によって言及・評価を得る口コミなどのコンテンツ)
2.オウンドメディア(自社メディアなど、自らがコントロールするサイト)
3.ペイドメディア(広告のように投資して他社のメディアへ出稿する外部メディア)

西川氏:それぞれの目的や採用ファネルを鑑みて使い分けすることが大切です。
また、採用広報で成果を出すためには次の2点が重要だと考えます。
1.人に届けること
どんなにいいコンテンツを作っても届いていないと意味がないので、とにかくリーチ数を上げて多くの人にお届けすることが大切です。
2.共感を得られているか
リーチ数と同様に読んだ人がその企業に対して共感するということも重要です。
共感してもらうことを意識してコンテンツ作りを繰り返して1年ほど経つと、採用現場では候補者の量と質が変わってきますので、ぜひ実践していただきたいです。
外部メディアを活用するキーワードは「権威性」
西川氏:リーチ数と共感を得るということを大前提として、ペイドメディア(外部メディア)をどのように活用するかということも大事な要素です。
候補者にとってより信頼度の高いチャネルとは、自社ではなく客観的に情報を発信する外部のメディアが紹介している記事です。そこで外部メディアの力を借りて自社の権威性を高めていくことが必要です。
西川氏:自社メディアと外部メディアを、うまく使い分けていくことが非常に大事になります。

コンテンツを活用し採用チャネルでの工数削減と採用率向上に貢献
西川氏:自社の理解を深めてより正しく認知してもらうためのツールとしてコンテンツをうまく活用すると、短期間でその効果を感じることが可能になります。特に効果的な2つの方法をご紹介します。
1.取材された記事などをスカウトメールに貼る
候補者にスカウトを送る際に記事を張り付けて送るとレスポンスレートが上がるという実績があります。
例えばある企業は、面接を担当するメンバーが増えると必ず、「FastGrow」に対してその方の取材を依頼します。つまり面接担当者の記事をあらかじめ制作しておくことで、候補者がその面接官に興味を持ち、スカウトに返信しやすくなることを理解しているからです。
2.コンテンツがあることでエージェントの理解度も上がる
エージェント側にとっても企業の情報をコンテンツによって共有できると理解度が高まり、採用候補者に対して積極的に紹介できるようになります。
西川氏:コンテンツを活用し人材紹介会社経由で紹介数が3倍になったという実例もあります。

西川氏:このようにコンテンツを活用すると、返信率の向上やエージェントからの紹介促進など、短期的に効果を出すことができるということです。
採用広報の基本は中長期投資として覚悟を持って行う活動
西川氏:短期的に効果を出す方法をお話しましたが、採用広報の基本的な考え方としては、今は転職を考えていない潜在層に対して共感度を上げてもらうことが目的でありそこに価値があります。
ですから基本的には短期で成果は出ないと考えていただくのが正しいスタンスであり、中長期的な投資としてしっかり捉えていくべき活動です。
SNSで読まれるコンテンツ企画メソッド
西川氏:ではここからは、コンテンツのお話をさせていただきます。
コンテンツ制作で抑えるべきポイント
1.だれに?=誰に伝えたいか
2.どんな?=何を伝えるか
3.どこで?=配信の方法

西川氏:これは採用ターゲットによっては同じ話でも伝え方が違うということです。例えばセールス向けなのかエンジニア向けなのかによって、同じビジョンやカルチャーの話でも伝え方が変わります。
SNSで読まれるコンテンツ制作
西川氏:「FastGrow」では読まれる=バズる記事の考え方として、SNSで拡散されるということをとても意識しています。
なぜなら20~30代のベンチャーおよびスタートアップや新産業領域に興味のある方をターゲットに捉えており、このような方の多くがツイッターで情報を収集していることから、ツイッターでどうやってバズるかということを念頭に置いてコンテンツ制作を行っています。
SNSで読まれるコンテンツにする重要なポイントは「タイトル」
西川氏:例えば「FastGrow」の記事は文字の数が6000から1万と比較的長いものが多いですが、その6000文字の中のどの部分をタイトルに持ってくるかという点だけでもPVや拡散性も非常に変わります。
あるいはトップ画像やOGP(※)のタイトルも大事です。
※OGP=Open Graph Protocol WebサイトのコンテンツをSNSで拡散する仕組み。記事のURLとタイトル、画像などがボックスにまとめて表示されたもので、OGPはその表示内容を設定するために使う。

インフルエンサーを巻き込みながら、「リツイートされる状況」をイメージする
西川氏:タイトルの他バズるために重要なことは、リツイートしてくれるフォロワーをたくさん持っているインフルエンサーと協力してコンテンツを制作する、いわば「味方につける」ことです。その上で、「どんなコメントともにリツイートされるのか」を具体的にイメージしながら企画を考えたり、タイトルをつけたりすることも重要となります。
まとめ
企業が求める優秀な人材をしっかりと採用に結び付けるために、自社の魅力やカルチャーなどの正しい情報を、時間をかけてターゲットに届けることが「採用広報」です。
自社の正しい姿を認知してもらいあらかじめ惹きつけを行うことができるので、ダイレクトリクルーティングなどを行った際の成功率のUPにもつなげていくことができる、非常に注目の施策です。
採用広報のツールとしてのコンテンツ制作では、「インフルエンサーを巻き込んだ企画を作る」「どのようにリツイートされるのかを考えながらタイトルをつける」といったポイントを押さえつつ、読者の興味を引くようなタイトル作りが、ヒットコンテンツを生む重要なポイントであることが分かりました。
転換期を迎えた転職市場でより効果的な採用を行うために、それぞれの企業において今回のセミナーを参考にしていただき、有効な採用広報に取り組んでいただければ幸いです。