セミナーレポート
2021年9月22日 開催

即戦力を採用し高いコミットを生み出す新たな採用・定着戦略とは

登壇者

山中 麻衣(やまなか・まい)

株式会社リンクアンドモチベーション
マネジャー 

大手企業向け組織人事コンサルティングを経験した後、ブランド・マーケティングコンサルティング担当として企業の商品サービスのリブランディングに従事。

橋本剛(はしもと・ごう)

Sansan株式会社 Eight事業部 Eight Career部
マネージャー

新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に入社し、Tポイント提携営業やデータベースマーケティング事業に従事。2019年にSansan入社。「Eight Career Design」立ち上げ期にセールス面を中心に携わる。現在はEight Career Designのマーケティング責任者を務める。

市場変化に伴う新たな人材採用/定着戦略の必要性

現代に即した人材の採用や定着について考察する際、その背景として忘れてはいけないのが「市場の変化」というワードです。市場の激変を捉えることで、適切な人材獲得戦略を打ち立てることができると言えるでしょう。

そこで、まず株式会社リンクアンドモチベーションの山中 麻衣氏から、変化する2つの市場の様子と、新たな人材採用や定着戦略の必要性について解説していただきました。

山中氏:企業というのは「商品市場」と「労働市場」という二つの市場に対して活動を行っています。その市場で近年、大きな変化が起きていることを理解する必要があります。

企業を取り巻くふたつの市場の変化

■商品市場(対消費者、対顧客など) ➡ 産業構造の変化によりサービス業が増加
■労働市場(対応募者、対労働者など) ➡ 少子化による急激な労働人口の減少

総務省の2016年の統計によると、日本の産業構造の中でサービス業がどんどん増加しています。

山中氏:このことから、企業の「ソフト化」が進行していると言えます。人のアイデアやモチベーション、ホスピタリティによって、サービス業の付加価値が生み出される構造へと大きな変化を遂げているのです。

山中氏:また、世界では人口が増加している一方で、日本の「労働市場」では少子化が年々加速しています。そのため人材獲得競争が激化しているということが、労働市場変化の大きな背景になっています。

山中氏:労働人口の減少により、もっとも難しくなっているのが優秀な人材の採用や定着です。

市場の変化に伴う採用や定着に対する新しい施策を実行している企業とそうではない企業とでは、事業成長にも大きな影響があると言われています。そのため経営層の方々は、この背景を踏まえた人材戦略を構築していく必要があります。

マネジメントの「重要度」「難易度」が高まっている

次に「社会的制約の増大」によって、マネジメントが非常に難しくなっているという点についての解説です。

山中氏:昨今、労働における制約が多くなってきました。コーポレートガバナンスやコンプライアンス、ハラスメント問題、働き方改革で制限される労働時間などがその一例です。こうした制約の中で、成果を求められることから、マネジメントが複雑化しているという現状があります。

具体的にはコロナ禍によって、大手企業の約90%がリモートワークの導入に踏み切りましたが、実際にやってみると以下のような課題が浮き彫りになっています。

「読めない」➡相手の感情が読み取りにくい
「伝わらない」➡伝えたいことが伝わらない
「話せない」➡気軽に話せる機会がなく、安心感が得られにくい
「見えない」➡業務をやっているのが見えず疑心暗鬼になりやすい

山中氏:このような状況から、マネジメントの重要性が高まっている一方で、その難易度も非常に上がっているという状況が見えてきます。

山中氏:マネジメントの重要度も難易度も高くなっている労働市場に、どう向き合っていくのか。これは、今後企業が持続的に成長を果たすうえで、必然的に大事なポイントになります。

以上が新たな人材採用や定着戦略の必要性を示す、現在の企業を取り巻く2つの市場の変化についてでした。

いずれも「共感」という言葉がキーワードになります。このことを踏まえて、今後の採用と定着について着目していきましょう。

人材戦略の重要なポイント

ここからは弊社の橋本から「人材戦略の重要なポイント」と題し、採用の観点でお話をさせていただきました。

橋本:私からは特に中途採用に関してお伝えします。まずこのパートでの大事な2つのポイントを覚えていただきたいと思います。

  1. 人材戦略は経営課題に直結する
  2. プロフェッショナルリクルーティング

橋本:「人材戦略は経営課題に直結する」こちらは当たり前の事でありながら見失っている方も多いと感じるので、大事なポイントとして押さえておいてください。

橋本:人材戦略の中において「プロフェッショナルリクルーティング」とは、非常に重要なキーワードとなっていますので、後ほど詳細を説明いたします。

企業に必要な「3つの視点と5つの要素」

では、実際にどんなことをすべきなのでしょう。はじめに下図をご覧ください。

橋本:こちらは経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 人材版伊藤レポート」です。

このレポートでは「これからのビジネスモデルや経営戦略は人材戦略と直結する」という考え方に基づいています。市場環境の変化やデジタル化の進展、外的要因の変化がある中で、企業がどういう視点と要素を持つべきか、ということを図式化したものです。

一方、個人においても価値観の多様化や人生100年時代の到来などにより、働き方の変化が生じています。

こうした状況下で企業が取り組むべきポイントが「3つの視点と5つの要素=3P・5Fモデル」です。

■視点
①経営戦略と人材戦略を連動させていく
②現状とあるべき姿を明確化し「As is-To be」を定量的に把握する
③企業文化の定着

■要素
①動的な人材ポートフォリオ
②ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
③リスキル・学びなおし
④従業員エンゲージメント
⑤時間や場所にとらわれない働き方

橋本:この5つのポイントに対応していかないと、今後の採用戦略やエンゲージメントの向上が難しくなっていくと考えられます。

これからの採用市場で求められている2つのポイント

橋本:では「採用」という観点に絞って考えると成功の鍵として2つのポイントが見つかります。

  1. 事業成長のため戦略的に人材の採用すること
  2. 現職で活躍する潜在層にまでアプローチすること

橋本:現職で活躍する人材に対して直接アプローチしていくことが今後重要なカギであり、弊社では「プロフェッショナルリクルーティング」と言っています。

プロフェッショナルリクルーティングとは

橋本:「プロフェッショナルリクルーティング」の実現には

採用担当部門では、従来の調整型の採用から「インハウスリクルーティング」への転換が求められているのです。

橋本:インハウスリクルーティングを強化し、求める人材を採用するポイントは大きく3つあります。

  1. 求める人材を解像度高く定義する
  2. 顕在層や潜在層を問わずプロフェッショナル人材に直接アプローチする
  3. アプローチ後は「惹きつけ」を行い「共感」を生む

それぞれについてもう少し深堀りしていきましょう。

1. 求める人材を解像度高く要件定義する

橋本:弊社では会社全体と部門とが実現したいことを明確にして、スキルや人材の前提条件やマスト(Must)とウォント(Want)を定義した上で人材の解像度を上げるという作業を必ず行っています。

2.顕在層・潜在層を問わずプロフェッショナル人材に直接アプローチする

橋本:次に大切なことは、転職の顕在層だけでなく潜在層にまで積極的にアプローチすることです。

その際に、今あるダイレクトリクルーティングのサービスを利用するのもひとつの手立てだと思います。

橋本:潜在層(検討層)を含めてアプローチをする具体例として、弊社では採用のイベントやリファラルなどを行いつつ、その際に採用できなかった人もしっかりとプールしています。

3.アプローチ後は「惹きつけ」を行い「共感」を生む

この段階では、まだ候補者の意向度が低いので、「共感」を生む過程が必要です。そのために必要なのが、カジュアル面談による「惹きつけ」です。

橋本:カジュアル面談に臨む候補者の方は、その会社に対して一定の興味を持っている方々です。そこでカジュアル面談の際には「見極める」のではなく、その方に「応募しよう」と思ってもらうことが非常に大事です。

カジュアル面談で大切なポイント

橋本:候補者の方に「共感」してもらうためには、自社の強みや理念、文化などを、面談に参加するメンバー全員が同じレベルで候補者に伝えられるようにしなければなりません。そのためには可視化しておくことをおすすめします。

そこでポイントとなるのが、採用の4Pと言われるものです。

弊社のエンジニア採用の場合では、「出会いからイノベーションを生み出す」という理念を非常に大切にしていることや、エンジニアが主導の企業文化があること、エンジニア向けの特権もあることなどを、弊社の強みとして候補者にしっかりと伝えられるように、カジュアル面談に参加するチームで可視化するようにしています。

人材定着の重要ポイント

続いて株式会社リンクアンドモチベーションの山中氏より、従業員の定着を図るエンゲージメントについてお話いただきました。

山中氏:「エンゲージメント」とは、企業と従業員の相互理解・相思相愛度合いであり、エンゲージメントが高まると、会社への愛着心や仕事への情熱が高まると言われています。

エンゲージメントは従業員満足度とは異なる

エンゲージメントと従業員満足度では、従業員と会社との関係性の捉え方が違います。

従業員満足度 ➡ 従業員が求めることに会社が応える上下関係(会社が上)
エンゲージメント ➡ お互いに求めて答えを出す(従業員と会社が対等)

山中氏:会社から見ると「従業員の貢献意欲を引き出す」、従業員からすると「貢献したいと思う」状態が「従業員エンゲージメントが高い状態」であり、その結果が業績にも直結していくということです。

山中氏:実際にエンゲージメントが高まると、翌年の売上や純利益が伸びるなどの業績の向上と、退職率の低下という点との相関性も見られました。

エンゲージメントの4つの要素

山中氏:先ほど申し上げた会社と従業員のパートナーシップ関係において、従業員側が「ここに居続けたい」と思うエンゲージメントには、以下の4つの要素があるのではないかと考えています。

  1. 目標の魅力 ➡ 会社がどんな理念やビジョンを掲げているか
  2. 活動の魅力 ➡ どんな事業や商品サービスがあり、どんなやりがいが得られるか
  3. 組織の魅力 ➡ 風通しが良いか、魅力的な先輩や経営陣が信頼できるかどうか
  4. 待遇の魅力 ➡ 給与や福利厚生など、どのような特権が得られるか

これはあくまで弊社の定義です。それぞれの企業様に対して従業員がどんな魅力を求めているのか、それに対して企業は何を満たしていくのかによって戦略は大きく変わりますのでご注意ください。

「診断」と「改善」でエンゲージメントを高める

山中氏:エンゲージメントを高めることによって、定着率や業績も高まっていきます。そのために大切なポイントが「診断」と「改善」というサイクルを回していくことです。

「診断」=貢献意欲と定着する理由を創造する

ここで従業員の不満だけを解消しようとすると失敗してしまいます。

ポイントは従業員の貢献意欲を高めることや、会社に居続ける理由をしっかりと作ることです。

山中氏:従業員の心理からすると、給料が上がらなくてもそれ以上に自分が求めている仕事に従事できれば、仕事に意義を感じることができ、その上会社の目的にも共感できれば、定着につながります。

この状況をどうやって生み出すかが、「診断」で明らかにすべきポイントです。

山中氏:従業員が会社に対して何を求めているか(期待度)を把握し、同時に対処するための自社のリソースや得意領域を明らかにしながら、組織改善に取り組むことが必要になります。

「改善」=エンゲージメントの高低を把握することで組織改善の打ち手を変える

組織改善において重要なことは、エンゲージメントを向上させるためのアクションプランの設定です。

例えば下図は株式会社リンクアンドモチベーションのアクションプランです。

山中氏:このような形でプランを立てている企業は少なくないと思われます。ただ、エンゲージメント状態が高いか低いかによって、打ち手は大きく変わります。

例えば、従業員に理念があまり伝わっていない場合は、そもそも従業員が受け止められるような状態にあるかどうかを、きちんと見極めることが必要です。

ある企業で、福利厚生のマッサージチケットを配布しようとしたところ、ある部署では好意的に受け止められましたが、別の部署では「さらに働け」という意味であると受け止められてしまい、不安が増長したという話がありました。

つまり、受け手側の状態をしっかりと把握せずに組織づくりを行うことには、非常にリスクが伴うということです。

ポイントとしては以下の点が重要だということが分かりました。

  1. 「診断」のポイント ➡ 「満足度」だけではなく「期待度」も測定する
  2. 「改善」のポイント ➡ 「組織状態」によって、打ち手の方向性を変える

山中氏:受け止める側の状態や組織状態の良し悪しによって、打ち手の方向性が変わるということをよく考えて、診断と改善を行っていただければ、エンゲージメントの向上につながっていきます。

まとめ

山中氏:採用と定着については、これまでも真面目にずっと取り組んできた企業が、今後は優位性を発揮できる環境になったと思います。

今後の人材戦略は「経営課題に直結」することを念頭に置き、積極的な「攻めの採用」=「プロフェッショナルリクルーティング」を行っていく必要があります。

従業員エンゲージメント向上には、株式会社リンクアンドモチベーション様の「モチベーションクラウド」を活用して実際に数値化するなど、組織の状態を明らかにして組織改善へとつなげていくことが大切です。

今回のセミナーからプロフェッショナルリクルーティングやエンゲージメントの向上というポイントを押さえていただき、企業の成長につながる施策を打ち出していただければ幸いです。

参加受付中のセミナー

あわせて読みたい

close
まずはここから 3分でわかるEight Career Design
close
まずはここから
3分でわかるEight Career Design