中途採用担当者向け・現場エンジニアと連携する採用組織づくり
セミナーレポート
2021年2月16日 開催

中途採用担当者向け – Gunosyの人事が語る 現場エンジニアと連携する採用組織づくり

転職求人倍率が高い水準を保っているエンジニアの採用においては、現場が求める人材の確保が課題となっています。そこで注目されているのが、現場と連携した採用組織を作る手法です。

今回、Eight Career Designは、企業のパフォーマンス・マネジメントを支援するAgileHRのイベントの中で、株式会社ギブリーと共同で、現場エンジニアと連携する採用組織づくりのセミナーを開催しました。

ここでは株式会社Gunosyの人事部採用推進チームマネージャの猪飼 直史氏にご登壇いただいたセミナーの内容をダイジェストでご紹介します。

株式会社ラクスの採用課ダイレクト・ソーシング責任者の奥山 みずき氏もご登壇予定でしたが、当日体調不良によりご欠席となりました。

エンジニアを採用に巻き込み、うまく連携していく方法を具体的にご紹介します。

登壇者

猪飼 直史(いかい・なおふみ)

株式会社Gunosy コーポレート本部
人事部 採用推進チーム マネージャ

フリーランスエンジニア紹介事業などを展開するgeechs株式会社にて、ITベンチャー企業を中心にエンジニアの採用支援とキャリアコンサルティングを一気通貫で担当。採用支援と年間130名以上のエンジニアのキャリアコンサルを経験してきた。2017年株式会社Gunosyに参画し、エンジニア採用担当を経て採用マネジメント全般を担当している。

山根 淳平(やまね じゅんぺい)

株式会社ギブリー
執行役員 兼 HR Tech部門 事業推進部長

2012年より株式会社ギブリーに参画、エンジニア向けHRテクノロジー事業の立ち上げを行う。ハッカソンやアイデアソン、プログラミングコンテストなど新しいエンジニア採用施策を取り入れ、年間100社以上のIT・通信・メーカー企業のエンジニア採用・育成を支援。

2017年に同社の執行役員に就任し、現在はセールスからマーケティングチームの統括を担う

モデレーターは弊社佐々木が担当しました。

Gunosyの採用組織体制について

山根氏:
はじめに、Gunosyの採用組織体制について教えていただきたいのですが、今はどのくらい採用されていらっしゃるのでしょうか?

猪飼氏:
Gunosyでは、コロナ以前は年間20名前後の中途採用をしていました。コロナ禍になってからは10名前後採用しています。リモートワークでオンボーディング(社員の定着および戦力化)を行うので、ジュニアやメンバークラスは抑えていて、シニアに絞って採用している状態です。

Gunosyの採用組織体制

猪飼氏:
選考は通常3回、基本的には人事ではなくて事業部のメンバーが面接を行っています。配属予定のエンジニア側の役職者にも早い段階から出てもらって、入社後のミスマッチを防いでいます。

山根氏:
採用チームの体制に変化があったようですが、大体何年くらいの期間で変更していますか?

猪飼氏:
スライドの図でいうと左から1年→2年→1年ですね。入社した当時は採用マネージャーの下に採用担当者がいるスタイルで、そこに私がエンジニア専任として入りました。

その1年後くらいに職種ごとの採用チーム体制に変更しました。エンジニアもエンジニア採用チームで対応することになり、VPoEがマネージャーとして入るように変わりました。

この方法を2年くらい続けて、コロナ禍になってから私が採用マネージャーとして、職種ごとに担当を分けない今の体制に変更した、という形です。

今は、ビジネス採用に関わっていたメンバーがエンジニア担当をしていたり、私がビジネス採用をしていたり、垣根なく取り組んでいます。

佐々木:
エンジニアの採用をするに当たって、エンジニアのことを知っている方でないと担当は難しいのでしょうか?

猪飼氏:
必要最低限の知識を持っていないと難しい、と感じています。

もちろん、「エンジニア出身」「エンジニアについて詳しい」「ITツールが好き」という人でないといけないわけではありません。ただ、知っていたほうが担当するご本人も仕事をしやすいと思うんです。

経験やスキルが必要というよりも、エンジニアに『ちゃんと勉強していますよ』という姿勢を見せることが重要で。

そうすることで、エンジニア側も『採用担当の人も勉強してくれているけど、やっぱり難しいよね』と、協力してくれる流れにもなりやすいな、と思っています。

佐々木:
勉強している姿勢を見せることが、エンジニアを巻き込んでいくコツでもあるということですね。

採用プロセスにおける人事とエンジニアの役割

山根氏:
採用プロセスにエンジニアをうまく巻き込んでいらっしゃる、ということでその役割分担を詳しくご紹介いただけますか?

Gunosyの採用プロセスにおける人事とエンジニアの役割

猪飼氏:
役割分担は、

人事
・選考オペレーション
・採用ドメイン知識の提供
・ノウハウの蓄積、横展開


エンジニア
・人材の要件定義
・スクリーニング
・アクラクト

というように切り分けています。

募集準備の段階では、採用担当が「どんな人を採用したいか」を考えるよりも、一緒に働くことになるエンジニアが「どんな人と働きたいか」を考えて採用人材の要件定義を行うほうが良いと思って役割を分けています。

また、チームで「自分たちが一緒に働きたいのはどんな人だろう」と考えてもらうプロセスは大事にしたいと思っています。

ただ「どんな要件にしたら欲しい人材を採用できるのか」という市場感の部分は採用担当のほうが詳しい部分です。

だから、エンジニアに一緒に働きたい人を考えてもらったところで、採用担当が採用のスペシャリストとして「こうするのはどうでしょう?」と提案をする。採用のノウハウが活かせる部分に関しては提案をして、一緒に進めていくスタイルを採っています。

母集団形成でもアトラクト(ファンづくり)でも、基本的には主軸をエンジニアに置いて、採用担当はサポーター役を担うようにしてます。

合否判断をエンジニアが出しているのも、当社の特徴的なところですね。そのため候補者にも「合否を出す人ではないので何でも聞いてください」と話してサポーター役として認識してもらっています。

山根氏:
エンジニアたちも自分たちの役割が明確になることで、協力する体制が醸成されてるんですね。

猪飼氏:
そうですね。当社ではSlackを使っているのですが、チャンネルで「こんな採用情報あったよ」「Twitterで就活している人を見かけたから声をかけてみると良さそう」という会話が自然と生まれるようになっています。

山根氏:
エンジニアも、採用に対してアンテナを立ててポジティブに動いてくださっているということですね。

人事とエンジニアで「求めるエンジニア像」の目線を揃えるためには?

山根氏:
難しいテーマだと思うのですが、キャッチアップしづらい「目線を揃える」部分をどう扱っておられるのかお伺いしたいです。

猪飼氏:
目線を揃えるために、私が大切にしていることは3つあります。

猪飼氏:
1つ目が『エンジニアリングの用語/考え方の学習から逃げない』です。

私もそうですが、採用担当で入社される方は理系ではない方が多く、「プログラミング言語って何?」というところから始まるので、抵抗感が高いのはすごく分かります。

でも、そこを頑張ることが大切です。

2つ目が『テキストで構造的に整理して言語することを怠らない』。

エンジニアは構造的に物事を整理したい方が多いので、採用担当側もそれに合わせて思考を作っていく必要があります。

採用は人という無形のものを扱っているので、テキストに起こして形にすることで、エンジニアにとっても解像度が上がってスムーズに進められると思います。

3つ目が『振り返りが肝!関係の質を高め全体最適を図る』。

当社が振り返りを重視する文化というのもあるのですが、振り返りを行わないとどうしても日程調整などタスクをこなすだけのチームになりがちです。

数多くのオペレーションを事務的にこなすだけでなく、

・「どんな知見が得られたか」ということをきちんと残していく
・人事とエンジニアそれぞれの悩みをシェアして関係性を作る
・人事のエゴ/エンジニアのエゴ、どちらかに寄りすぎていなかったか

というところをポイントに振り返るようにしています。

山根氏:
スライドの左下にある『振り返り』は、具体的にどんなことをしていらっしゃいますか?

猪飼氏:
うまくできたこと(=Keep)と課題(=Problem/Try)を出して次につながるようにしています。

(例)
<今週のKeep>
・「採用基準の洗い出しができた」とか「フロー叩きを作ることができた」
・面談の中でこういう風に話をしたら魅力付けうまくいった気がする
・事前準備でしっかりアジェンダ作ってこれを用意したのが良かった

<今週のProblem/Try>
・◯◯というワードが分からなかった
・ここの進め方がよくわからなかった
・エンジニアに面接のお願いした時にうまくレスが来なくてスレッドが伸びてしまった

KeepもProblem/Tryもそれぞれ、なぜそうなったのか、というところを振り返りで考えて、次はこういうスタンスでやっていこうという方針を決めています。

例えば、エンジニアに面接のお願いをした時のProblemだったら

1:「どういう伝え方だったらよかったのか」という振り返りをする
2:「どういう情報だったら相手が認知してくれて、作業負荷が低くなるのか」の選択肢を挙げる
3:次はこうしましょう、と決めてTryする

という流れで進めていくイメージです。

ここでまとめたものはSlackで社内にシェアして確認・返信してもらっています。この流れがあることで、社内での発言がしやすくなっていると思いますよ。

エンジニアを採用に巻き込む方法

山根氏:
私がさまざまな企業様の採用支援をさせていただいている中で、『エンジニアが採用に関われる体制を作りたいが、なかなかそこに辿り着けない』ということが多いように感じています。

猪飼さんは、どうやってエンジニアを巻き込んでいますか。

猪飼氏:
まずは実績を作ることが一番大事だと思っています。

ただ、実績を作るまでが一番ハードルが高いんですよね。その手前でできることとしておすすめなのが、エンジニアの役職者と関係を築いておくことです。

エンジニアの賛同者を増やすことがカギになるので、私は関係を作るためにランチに行ったりエンジニアの歓迎会の幹事をやったりしています。

歓迎会の幹事をすると、5〜60人いるエンジニアの顔と名前を覚えられるんです。入社された方がチームに馴染む過程も見られるなどメリットも多く、エンジニアの輪の中に入っていきやすいのでオススメです。。

佐々木:
そういうところまで対応されているんですね。

猪飼氏:
エンジニアの協力者を作らないと話は進まないので、まずは1人に協力してもらうことを目標に動いてみるのが良いと思います。

佐々木:
元々エンジニアの方たちは協力的だったのでしょうか?

私は前職が小さい組織だったので、採用に積極的ではない方が多かったのですが、そうした雰囲気のある組織の場合、猪飼さんだったらどうやってエンジニアを巻き込んでいきますか?

猪飼氏:
当社は、私が入った時からエンジニアの方も協力的でした。創業して数年というタイミングだったので、みんなで一緒にやっていく空気があったのだと思います。

エンジニアの巻き込み方のポイントは、相手の気持ちに寄り添って丁寧に対応することです。

採用はエンジニアにとって専門外のお仕事なので、本来の業務に対応しながら採用にも入ってもらうことになります。そのためオペレーションを真摯に細かく配慮を持って行うことを大切にしたいと思っています。

例えば、

・日程調整は急に入れない
・動く前に断りを入れる
・面接前にアジェンダを出してポイントを伝える

など、エンジニアが面倒くさいと思うところを排除していくのがカギですね。

意思決定してもらう時も「AとBどちらがいいと思いますか?」と選択肢を示して、すぐに判断できるようにするのも大事だと思います。

佐々木:
本来の仕事にプラスして割いてもらう採用部分のリソースを、いかに軽減してあげられるか、というところがポイントということですね。

質疑応答

Q:採用スピードはどのくらいですか?内示までどのくらいかけているのかをお聞きしたいです。

猪飼氏:
中途エンジニアで1ヶ月半くらいなので、早くはないです。二次面接以降は基本的にエンジニアリングマネージャークラスが出ているので、日程調整が大変なのが大きいと思います。

急ぎ過ぎて見極めを誤ると手戻りが大きくなってしまうので、スピード重視ではなく見極め重視で進めています。

あとは、ステップごとに候補者の状況なども確認しているので、「この人は急いだほうがいい」という見立てをしたら早めに動くようにするなど細かく見て調整するようにはしていますね。

ただ、オファーを出すまでの期間は短くしたほうがいいです。内定を出すと決まってから条件調整をする部分については、1日2日で決めるようにしています。

Q:エンジニアの用語や考え方の学習方法を教えてください

猪飼氏:
私が実践している学習方法は3つあります。

・人に聞くけど工夫をする
・本を読みましょう
・Slackなどのチャットツールに出ている情報を拾う

1つ目がエンジニアから教えてもらう方法です。単に「Javaってなんですか?」と聞くのではなく、基本的なところは調べてから聞くことが大切。「JavaとJavaScriptって違うんですね」など、『ここまで調べたけどここからがわからない』というのを明確にして質問すると答えてくれやすくなります。

2つ目が、本を読むこと。最近便利な教材も出てきていて、元LAPRASの中島 佑悟さんという方が書かれている本などを読んで勉強しています。

3つ目が、チャットツールで検索をかけて情報を漁ることです。当社ではSlackを使っているので、「方針」と調べるとエンジニアたちがまとめた方針資料が出てくるので、時間のある時にチェックしています。

最後に

エンジニアを採用に巻き込んでいくためには、『役割を明確にし採用を担当する人事部側がサポーター役として丁寧に対応することが大切』と猪飼氏は語っています。

「採用もやってほしい」とただ想いをぶつけるのではなく、歩み寄れるよう勉強をしたりコミュニケーション手段を増やしたりといった下地づくりから、プロセス完了後の振り返りまでしっかり行う重要性も伝わってきました。

採用活動の肝となる、エンジニアをいかに巻き込んでいくのか参考にしていただければと思います。

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