セミナーレポート
2021年8月5日 開催

年間20名を採用! 現場を巻き込むエンジニア採用への転換方法とは

転職市場がレッドオーシャン化する中で、特に導入する企業が多く、あらためて関心が高くなっている施策がダイレクトリクルーティングです。

今回は、株式会社ラクスの奥山 みずき氏をゲストとしてお迎えし、エンジニア採用におけるダイレクトリクルーティングと、同手法の重要なポイントとなる「スクラム採用(※)」について、株式会社HERPと当社との共催でセミナーを開催しました。

※スクラム採用:共通のゴール(=採用活動の目標)に向けて、全社員が一丸となり取り組む方法です。採用活動のワークフローを細分化して権限を現場にも委譲し、採用活動の内容を全社で共有するなど透明化をはかった上で、現場を巻き込み、採用を進めます。

採用は人事だけでなく、現場社員を巻き込む重要性が問われている時代です。「スクラム採用」は、今後の採用現場に必要な手法として、求められることが予想されます。

登壇者

奥山みずき(おくやま・みずき)

株式会社ラクス 採用課
ダイレクトリクルーティング責任者

前職は人材紹介会社のIT専任チームにてRAを経験。中小~大手のSier、コンサル、自社サービス系の企業を担当。エンジニアを中心とした採用支援を行う。2018年にラクスへ採用担当者として入社。エンジニアを中心とした全職種を担当した後、昨年ダイレクト・ソーシング専門のチームを立ち上げ。現在はメンバーのマネジメントに加え、ダイレクト・ソーシングとエンジニア採用の最大化をミッションとして日々奮闘中。

冨田真吾(とみだ・しんご)

株式会社HERP レベニューマネージャー

京都大学人間環境学研究科修了後、株式会社ビービットに入社。デジタルサービスのUXコンサルティングに従事したのち、SaaS型の分析クラウドのインサイドセールスチームの立ち上げ、プライシング戦略の立案などに従事。HERPに参画後は、レベニューマネージャーとして100社以上の採用支援を担当しながら、レベニューチームの採用・組織づくりも担当。レベニューチームは、2年で4名から15名のチームに成長。

ファシリテーターは弊社橋本が担当しました。

株式会社ラクスにおける採用の現状と導入前の状況

現場を巻き込むエンジニア採用への転換率方法

冨田氏:数年前まではダイレクトリクルーティングでの採用実績がほとんどゼロだった株式会社ラクスですが、現在では一年の間に一定数の採用が継続できていらっしゃいます。その過程の中で、現場のエンジニアを巻き込んだ「スクラム採用」をしっかり形成していかれたことが非常に注目すべき点です。

奥山氏:弊社では2020年8月からの一年間で、エージェント経由で200名、そのうちエンジニア40名を採用しました。一方、ダイレクトリクルーティングで採用したのは70名で、うちエンジニアが25名という内訳になっています。

直近の中途採用決定数

冨田氏:エンジニア採用で媒体を利用する場合、非常に工数がかかると思われます。どのような体制で運用しているのでしょうか。

奥山氏:エンジニア採用担当は2人です。それぞれエージェント対応と、ダイレクトソーシング対応で、4媒体をひとりで担当しています。弊社では現場担当者も含めた役割分担を行っています。

《現場を巻き込む=スクラム採用の役割分担》
・求職者(ターゲット)のピックアップ ➡ 採用担当者(奥山氏)
・求職者のジャッジ ➡ 現場(課長クラス)
・求職者へのソーシング ➡ 採用担当者(奥山氏)

奥山氏:現在20~30名のメンバーを束ねる課長クラスがジャッジと、希望者のカジュアル面談も実施しています。

スクラム採用転換前の状況

奥山氏:2018年頃までの状況は、エージェントを通しての採用がほぼ100%でした。エージェントに対しても待ちの姿勢だったため、採用数ゼロという月もありました。また、当時の現場とのコミュニケーションは事務連絡など必要最低限でした。つまり現場を巻き込んだ採用には程遠い状況です。

《スクラム採用への転換前の状況》
・エンジニアの採用決定数は現在に比べ少なく苦戦していた
・現場の採用への関わり方も必要最低限のコミュニケーションのみ
・現場とのスクラムスカウトもほぼ皆無

スクラム採用への転換前の状況

奥山氏:エンジニア採用を任命され前年の数値を見て、これは何か手を打たなくてはと思ったことが、スクラム採用へ舵を切ったきっかけです。

スクラム採用転換への2ステップ

奥山氏:スクラム採用への転換には、大きく2つのステップを踏みました。

《スクラム採用転換へのステップ》
1.現場からの信頼を獲得する
2.効率化で現場の負荷を最小限にする

スクラム採用転換への2ステップ

1.現場からの信頼を獲得する

奥山氏:現場からの信頼を得るためのポイントは大きく3つあります。

<現場からの信頼を獲得するためのポイント>
①まずはアクションをやりきる
②有力候補者に辞退されずに採用を獲得する
③採用することが信頼獲得のための最短経路

①まずはアクションをやりきる

奥山氏:採用できるできないの前に、まずアクションをやり切ります。手順に沿って説明します。

1. 1人目から短期間で2人目の採用実績を作る

現場からの信頼を得るためにもっとも重要なことはまず「採用決定」を実現することです。

奥山氏:当社ではまず、エージェント経由での現場巻き込み採用を始めました。そこで2人目までをポンポンと一気に採用することで、現場の方たちのモチベーションを高めるのです。

2. スカウトを依頼する

奥山氏:現場のエンジニアのテンションが高くなったタイミングで、スカウトという手法があることを伝え、そこからスクラム採用を依頼するようにしました。

3. エンジニアとの接点数を増やす(カジュアル面談)

奥山氏:まずは「面接の希望はまだないが転職を迷っている層」に対して積極的にアプローチして、まずはカジュアル面談をしましょうという流れを作りました。

現場のエンジニアと接点を持ってもらうことでミスマッチをなくし、採用の可能性を高くするためです。

4. 依頼されたことには即日対応する

奥山氏:現場との連絡は、即レス即対応を心掛けていました。

5. 現場の御用聞きではなく、能動的に提案する

奥山氏:エンジニアの採用では、情報が薄く不採用のジャッジをする方が多いのが問題でした。そこで私から候補者の良いポイントやほかの候補者との比較など多角的な提案を出して、もう少し熟考していただくような活動もしていました。

②有力候補者に辞退されずに採用を獲得する

奥山氏:現場からの信頼を獲得する2つ目のポイントは、有力な候補者に辞退されないようにすることです。ここでは以下に気をつけました。

・候補者に対してはCA、会社に対してはRAとして働きかけ、期待値のズレが生じないように調整
・最終面接前には、候補者に対して転職軸のヒアリングや面接対策の相談を実施
・候補者の情報を「都度」「細かく」共有する

奥山氏:有力な候補者に辞退されないためには、私たち採用担当者が求職者と現場エンジニアの中間に入り、どちらにとっても味方であると理解してもらうことが重要なミッションだと思っています。

その中で、特に最終面接前の候補者に対するヒアリングでは、キャリアアドバイザーのようにしっかりと聞き取りをしています。この時に、「面接対策しませんか」とお声がけすると、みなさんポジティブな反応を示されますよ。

冨田氏:ヒアリングのポイントはありますか?

奥山氏:一次面接を通しての懸念点を聞き取ることです。

ただ「懸念点はありますか」と聞いても多くの方は「ない」とおっしゃるので、「もう少し時間があったら聞きたかったことはありますか」と質問するようにしています。これこそが懸念点になるので、最終面接でフォローする点が明確になります。

③採用することが信頼獲得のための最短経路

奥山氏:これは先程もご紹介したとおりです。まず「採用決定」を実現することが重要になります。

2.効率化で現場の負荷を最小限にする

冨田氏:続いてスクラム採用転換への2つめのステップである「効率化で現場の負荷を最小限にする」という点について解説をお願いいたします。

効率化を行う

1.スカウト対象のジャッジ基準と参考文面を明文化

奥山氏:スクラム採用で現場の負担を減らすために、スカウトで送付する文面を共有すると良いと思います。ただしテンプレートではなく、候補者ごとにカスタマイズして送るため、下の図のように候補者の要件を書き出して、どのような組み合わせにしたら良いか簡単に分かるようにしました。

奥山氏:これはかなり簡易的な図です。この候補者は1番と3番の組み合わせ、違う候補者は1番と2番と4番。そういう感じでナンバーを共有して、文面を当て込んでいくというやり方をしています。

橋本:弊社の場合、現場が求めている高いスキルに対して、必要条件としてはそこまでのスキルはなくても構わないことが実際は多いと感じていました。そこで最低限必要という要件を可視化した上で、スカウトを実行するというフローを取り入れています。

実際に運用しているジャッジ基準

2.利用する媒体を少数に絞り込む

奥山氏:ちょうど1年ほど前は10社ほどの媒体をまんべんなく利用している状態でした。しかし最近は各媒体の特徴も分かってきたので、エンジニアの負担を減らすためにも、上位3~4社ほどに絞り込んでいます。

冨田氏:私もダイレクトリクルーティングによるエンジニア採用を成功させている多くの企業の方から、媒体を絞るというお話を伺っています。3つでも多いくらいで、1つでも十分だという方もいらっしゃいます。利用する媒体をひとつに絞って、そこで成果が出るまで改善したほうがいい、という声をよく聞きます。

橋本:弊社の場合、現場が求めている高いスキルに対して、必要条件としてはそこまでのスキルはなくても構わないことが実際は多いと感じていました。そこで最低限必要という要件を可視化した上で、スカウトを実行するというフローを取り入れています。

現場を巻き込むエンジニア採用転換に関するQ&A

冨田氏:ここからは視聴者から寄せられた質問を、私から奥山さんと橋本さんに投げかけていきたいと思います。

評価制度について

冨田氏:現場の方の採用参加について、評価制度を設ける必要があるかどうかについて、Sansanさんいかがですか。

橋本:弊社の評価制度に採用は入っていないと思います。ただリファラル採用を積極的に導入して、社内にも採用を賞賛する文化があります。リファラルで入社した社員が、今度は採用に協力する側になるので、現場が採用に関わることに対してはネガティブではないという環境が醸成できていると思います。

冨田氏:何か秘訣はありますか。

橋本:新人社員研修や二週間に一度の朝の全体会議でしっかりと理念浸透を図ります。また全体会議ではリファラルで入社した社員に関して、紹介者と候補者ともに紹介され会社から賞賛されるので、体験として刷り込まれているのかもしれません。

現場エンジニアを巻き込むためのカルチャー

奥山氏:現場エンジニアの管理職には、それぞれの目標の中に「採用数」という項目を持っています。これは評価制度にも組み込まれています。ですから、おのずと実践する環境ができていると思いますし、採用に関するウェイトは、この一年で非常に高くなっていると感じます。

まとめ

労働人口が減少している現在、優秀な層や高いスキルを持つエンジニアなどの層に対して、できるだけ多くの母集団をキープする動きは活発になっています。

ダイレクトリクルーティングの必要性はさらに向上する中で、それを実現するためには全社をあげて採用に取り組むスクラム採用が鍵となるでしょう。

今回のセミナーで語られた内容を踏まえてスクラム採用へと転換をはかり、社内での採用カルチャーを醸成していくことは、今後の企業の成長戦略において重要な軸のひとつになるはずです。ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

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